第76話 ベルファの秘策
オレは、竜巻を食らって落下するエアリスを受け止めるために走った。
チクショー、上半身全体が痛いのに……。
ぐしゃっ。
結果、エアリスの体を受け止める事はできたが、そのまま彼女の体に押し潰されてしまった。なんか、あお向けに倒れたオレの顔の上にエアリスのお尻が乗っかっているみたいなんだが、彼女は気を失っているみたいだし、まあ問題ないだろう。
「ナリユキ君、大丈夫!?」
そして、ユリカが駆け寄って来た。オレがエアリスの体の下から這い出ると、ユリカが手をかざした。オレにヒーリングをかけてくれるようだ。
「そのまま、うつ伏せになって! まず、後頭部から治すから! これ以上、ナリユキ君の頭が悪くならないように!」
「し、失礼な事を言うな! オレの頭は悪くない!」
オレは思わず反論した。ヒーリングはありがたいけど、一言余計なんだよ!
しかし、ベルファを治療していたユリカがオレの元へ来たという事は……その瞬間、オレの背筋に悪寒が走った。
「さっきは、よくもやってくれたわね!」
地の底を這うような低い声で、ベルファがゼグロンを怒鳴りつけた。既に立ち上がって、魔法の杖を高く掲げている。彼女の全身は、その怒りを表すかのように赤く輝いていた……どうやら、呪文の詠唱も済ませて、発動可能な状態になってるっぽい。
ああ……この女は、怒らせると一番怖いよ……。
しかし、目は見えなくともゼグロンはベルファの異変に気づいて彼女の方を向いていた。
「眼鏡は失ったが、お前の魔力は感知できるぞ。魔王軍の四天王を舐めるな! 魔法の能力は私の方が上だという事を、思い知るがいい!」
ゼグロンの言う通りだ。魔力が大量に蓄積されているベルファの位置は、同じく魔力を持つゼグロンには感知されてしまう。魔法のぶつかり合いでは、やはりベルファに分が悪そうだ。
「炎よ高く舞い上がれ! ファイヤーストーム!」
ベルファが叫ぶと、彼女の杖から天井まで届くほどの炎の渦が生まれて、ゼグロンに襲いかかった!
「無駄だ! メイルシュトローム!」
対するゼグロンは、水でできた巨大な渦を作り上げた。さっきのように、炎に水をぶつけて相殺させる気だ。しかし、ベルファは不敵に微笑む。
「バカね! 同じ手は二度も通用しないわ!」
その時、驚くべき事が起こった。ベルファの放った炎の渦が、まるでゼグロンの水の渦をよけるようにして軌道を変えたのだ。
炎の渦は大きくカーブしながら動き続け、ついにゼグロンの体を捉えた!
「ぐああああ!」
炎の渦に包まれたゼグロンの断末魔の叫びが、室内に響き渡った。これで倒したか?
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