第75話 形勢逆転?

「ぐああああっ!」


 オレの腹部に激しい激痛が走った。オレの姿に気づいたゼグロンの剣がまともに直撃したのだ。室内にオレの絶叫が響く。

 オレは、たまらずに地面を転げ回った。同時に右手を強く握りしめた。反対側の左手で、自分の腹部を押さえた……よかった、血は出ていない。またも低重力の環境に救われたらしい。


「ナリユキ、しっかりして!」


 飛ばされた剣を拾ったエアリスが、オレのそばへ走り寄って来た。


「オ、オレの事は後でいい! それより、ゼグロンの動きは!?」


 オレは苦しみながらも、それだけをやっと口に出した。やれる事はやった。これでもダメなら、もうどうしようもない。


「あ、あれっ……?」


 エアリスが不審そうな声を出した。


「どうして、ゼグロンの動きが止まってるの? 反撃して来ないよ?」


 オレは、自分の体をゼグロンの方へ向けて、その様子を確認した。エアリスの言う通り、体を全く動かさず、両足を肩幅まで開いたまま、首だけを上下左右に動かしている。


「あっ、そういう事か!」


 エアリスがそう言って、オレの右手を見た。握りしめた右手の中には、ゼグロンがかけていた青いフレームの眼鏡が潰されてレンズが粉々になっていた。


「頼むぜ? これがダテ眼鏡だったりするなよ? スペアの眼鏡を持ってたりするなよ?」


 オレは思わず呟いていた……しかし、幸いな事にその心配は杞憂に終わった。


「おのれ! どこに行った!?」


 ゼグロンは右手で剣を握ったまま、周囲をキョロキョロするばかり。すっかり動揺している。


「サンダーフレア!」


 ゼグロンは電撃を3本同時に放つも、全てあさっての方向に飛んで行った。


「やめろ! 国王に当たってもいいのか!?」


 国王を守る衛兵の一人が叫んだ。いいぞ、ナイスフォローだ! その声を聞いたゼグロンの動きがピタッと止まった。


「よくやった、ナリユキ! 後はボクに任せて!」


 エアリスがゼグロンの方へ向き直った……頼むぞ!


「最後はボクがカッコ良く決めてやる! これでトドメだああああーっ!」


 叫び声をあげながら、剣を振りかぶってゼグロンへ迫るエアリス……あっ、アホ! そんなに大声を出したら……。


「トルネード!」

「うひゃあああっ!?」


 エアリスの大声を聞いたゼグロンが、瞬時にさっきの竜巻を作り上げたのだ。エアリスは至近距離まで近づいていたため、よける間もなく竜巻に巻き込まれて宙へ舞い上がってしまった。

 本当にアホだ! 詰めが甘すぎるんだよ!

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