第67話 迎撃せよ!
ベルファの報告を聞いたオレは、名刀『鉄子』を背中に携えて西の方向へ走り出した。
「もしもの時のために、刀はできるだけ持っておいてよ」
と、エアリスに口酸っぱく言われていたのだ。エアリスとの剣の稽古の最中に、鉄子の素振りをさせられた事もあったっけ。
ユリカはベルファの後ろで杖に跨り、2人乗りで飛行していく。ベルファの腰に両腕を回して、彼女の背中にぴったり密着するユリカ。あまりのスピードに、「ひい!」とか「きゃあ!」とか悲鳴をあげている。
そして、エアリスが走る。彼女は人並み以上に速く走れるのだが、オレやベルファのスピードが原付バイク並みなのだ。多少、遅れるのは仕方がない。
「うわあああ!」
前方から悲鳴が聞こえた。おそらく、王都の入口にある門を魔物たちが突破して内部に侵入してきたのだろう。オレたちは迷わず悲鳴のする方へ向かうと、多数の呪いの騎士たちが一段となって、こちらへ迫って来た。やはり、王城の陥落を狙っているのか!
「ナリユキ、よく聞いて! 騎士の腹の箇所に、魔導石が内蔵されているわ! そこを狙って叩き斬るのよ!」
「わかったぜ!」
ベルファのアドバイスに従って、オレは鉄子を鞘から引き抜き、目の前の騎士の胴を狙って一気に横から斬りつけた!
キイィィィーン!
甲高い金属音が辺りに鳴り響き、同時に騎士の上半身が宙に飛んだ! こんなに凄い威力だとは!
あまりの切れ味に、オレも他の騎士たちも一瞬動きが止まっていた。斬られた騎士の下半身は、そのまま倒れて動きを停止した。
「ひ、ひるむな! 全員でかかれ!」
呪いの騎士たちは動揺するものの、いっせいにオレへ襲いかかって来る。しかし、オレと比べて段違いにスピードが遅い。オレは向かって来る騎士たちを、次から次へと斬り捨てていった。
「いいぞナリユキ! ボクも負けてられないね!」
さらに遅れて到着したエアリスが加わったことで、勢いは一気にこちら側へ傾いた。エアリスも騎士の攻撃をひょいひょいかわしながら、華麗に相手の腹を斬っていく。
「二人とも、よけて!」
そして、ベルファの声が飛ぶ。ベルファの十八番、氷結魔法が発動可能な状態になったのだ。
その瞬間、オレの隣にいたエアリスの姿がフッと消えた。オレも慌てて、その場で思いっきりジャンプする。オレの体はたちまち、10メートルほどの上空まで跳び上がっていた。
その直後、ゴオッという音を立てて、凄まじい冷気がオレの足元で吹きすさんだ。吹雪による激しい冷気によって、騎士たちの体が次々と凍りついていく。相変わらずの威力だな。
オレはそのまま、騎士たちの後方へ着地した。一団の後方は冷気が届いていなかったが、連中は既に混乱していた。
オレは、回り込んで来たエアリスと合流して、動ける騎士を斬り倒していった。
全ての騎士の動きを停止させるのに、15分とかからなかっただろう。
「よくやったよ、ナリユキ! 作戦通りだよ!」
「お前もナイスだ、エアリス!」
オレとエアリスは刀と剣をそれぞれ鞘におさめて、ハイタッチを交わした……のだが。
「まだよ! 敵はまだいるわ!」
ベルファが厳しい声色で叫んだ。
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