第63話 逆襲のベルファ
よく見ると、頭に白髪のある男だった。60歳くらいだろうか。
「おい、あんた! ここで何が起こって……えっ?」
男に対して問いかけたオレだったが、男が向けていた視線の先を見て動きが止まった。そこにベルファがいたのだ!
しかし、ちょっと様子がヘンだ……黒いアイマスクを着けていて、両手でムチを握っている。そして踵の高いハイヒールを履いていたのだ。
「ベルファ! ここにいた……ええっ!?」
ユリカとエアリスも叫んだ後、同時に動きが止まった。
「よくも、こんな所に閉じ込めてくれたわね」
ベルファはそう言うと、コツコツとヒールの音を響かせて男の前まで歩いて来た。そして、何のためらいもなく、ヒールの踵で寝っ転がる男の背中をグリグリと踏みつけた。うわ……痛そう……。
しかし、男は恍惚とした表情で驚愕の発言を口に出した。
「ああ、その冷たい表情と声、たまりません……もっと強く踏んでください~」
オレもユリカもエアリスも、唖然として反応できない。しかし、ベルファはそんなオレたちを全く気にする様子もなく、楽しそうに男を連続して踏みつけ始めた。
「ほら、この卑しいブタめ! こんな事をされて、喜ぶなんて、お前は、本当に、変態だよ!」
さらに言葉責めを始めるベルファ。しかし、男はそれを喜んでいる…………。
「ええええ…………」
オレたち3人はドン引きしていた。せっかく本気で心配して駆けつけて来たのに、今までの苦労は何だったの……?
「も、もういいベルファ。お前を助けに来たんだ。この男がゲディスなのか?」
「そうよ! こいつが、あたしたちを、拉致した、張本人よ! 毎晩、こうやって、イジメられるのを、楽しんでる、変態野郎よ!」
ベルファは説明しながら、なおもゲディスをげしげしと踏みつけて、そのまま気絶させてしまった。いや、お前も楽しんでるだろ? どう見ても女王様だよ!
オレたちはその後、ゲディスを憲兵へ突き出し、拉致された女の子たちも全員無事に解放された。また、ゲディスが経営していた酒場は営業停止になった。
ゲディスは最初、店員のメイドを使って踏みつけられたりムチで叩かれる行為を楽しもうとしたらしいが、彼女たちが店をやめてしまうため、傭兵を雇って10人もの女の子を拉致してやらせていたという。逆に、ゲディスの方が女の子に襲いかかる事は無かったらしいけど。それだけが救いだ。
「うふふ。このムチもらってきちゃった。今度、これであんたを叩いてあげようか?」
ベルファが、オレに向かって不気味に笑いながら言った…………やめて! オレにそんな趣味は無いから!
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