第64話 暗躍する傭兵集団

「まあ、今回の件は、みんなに感謝してる。あ、ありがとう……」


 ベルファが解放された日の翌朝、彼女はそう言ってオレたち3人に頭を下げた。

 結局、ベルファを解放した時は夜になっていて、犯人のゲディスを憲兵へ突き出した後は事情聴取が何時間も続けられ、全員クタクタになって宿屋に着くとすぐに寝てしまったのだ。ディナーも食べずに。


「本当、心配したんだよ! でも無事で良かった!」

「これからは気をつけるのね! 結構、捜すの大変なんだから!」


 エアリスとユリカも衝撃的なシーンを見せつけられたショックからは立ち直ったらしい。いつもの2人に戻っていた。


「でも。気になる事があるのよね」


 ベルファはそう言って腕を組んだ。


「どういう事なんだ? 話してみなよ」


 オレは、何気なく彼女に尋ねた。


「あたしが拉致された時の状況よ。一瞬で口を押さえつけられて、抵抗する間もなく眠らされたの。たぶん、4人くらいじゃないかしら。すごく手慣れた感じだったわ」

「なるほど。ゲディスが雇っていた傭兵たちだな。あの牢屋にも覆面をした見張りが1人だけいたけど、オレが倒した後、逃げてしまったみたいだからな。お前を襲った連中も、覆面をしていたのか?」

「ええ。だから、誰一人として顔はわからない。だけど、金目当てにどんな汚れ仕事を引き受ける傭兵たちもいる。『カオスフレイム』っていう最低最悪の傭兵集団が、このリーデシア大陸中に根を張っているの」

「今回の一件は、その連中が絡んでいるという事か?」

「連中のうちの一人が、『カオスフレイム』の紋章バッジを身に着けていたのよ。まあ、ゲディスは憲兵隊にそこまでは話すだろうけど、ヤツらもバカじゃない。もう、姿をくらましているでしょうね」


 まいったな……魔物を相手にするだけでも一苦労なのに、人間の相手などしてられないぞ。しかし、いずれ戦わなければいけない相手なのかも知れない。


「まったく! お金目当てに女の子をさらうなんて、人間の風上にもおけないのね!」


 ユリカが憤慨した。言ってる事は正しいんだけど、金に意地汚いお前が言ってもイマイチ説得力に欠ける気がするんだが……まあいいか。

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