第31話 エアリスの速攻

「エアリス、どうして!? どうしてベルファなんかと手を組んだの!?」


 ユリカもオレと同じ事を思ったのだろう。エアリスに問いかける。


「ボクは伝説の勇者になりたいんだ! だけど、誰一人としてボクを勇者として認めてくれない……でも、ベルファだけは違った。初めてボクを勇者として認めてくれたんだ!」


 アホが……まんまとベルファに丸め込まれやがって…………。

 まあ、オレもエアリスをおだてて味方にしようと企んでいたけどね……。


「ゴーディスたちは、あたしの魔法で追い返したわ。あんたさえ殺せば、このクエストは完了……ふふふ」


 ベルファは不気味に笑う。嵐の前の静けさという感じだ。

 オレのほおを冷や汗が流れる。ユリカは回復役でしかなく、戦力にはならない。圧倒的に不利な状況だ。

 しかし。


「手を出さないでくれ、ベルファ。ナリユキとは、ボクが一対一で戦いたい!」


 エアリスが一歩前に出る。

しめた! 二対一でなければ、オレにも勝機がある!


「わかったわ。だけど、トドメだけは絶対に私が刺す。それでいいわね?」

「もちろん! じゃあ、いくぞナリユキ!」


 軽快にステップしながら剣を構えるエアリス。オレは戦う覚悟を決めた。

 できれば、女の子を殴りたくはなかったが、相手が殺す気で向かって来るのだから、そうも言っていられない。

 エアリス目がけて突っ走る! 一気に加速! 渾身の右ストレート!


 すかっ。


「……えっ!?」


 か、かわされた……?

 一瞬、ボー然としたオレの真横にエアリスが回り込んでいた。

 速い!


 ガツン!


 わき腹に鋭い痛みが走った。避けきれなかった。


「か、硬い…………!?」


 今度はエアリスの方が驚愕した。仕留めたと思ったのだろう。

だが、エアリスの剣は、オレのわき腹に少し食い込んだだけだ。血も出ていない。


「ええい! フェリオが召喚した人間は、化け物か!」


 構わず、次々と剣を繰り出すエアリス。左腕、右足、腹……何発かオレの体にヒットした。凄まじく痛いが、幸い致命傷にはならなかった。これも、この異世界がオレにとって低重力だからか……。


 オレが倒れない様子を見て、エアリスに焦りの表情が浮かんだ。


「今だ!」


 その隙を突くように、エアリスへ飛びかかる。上手い狙いだと思ったのだが、エアリスはこれもひらりとかわしてしまう。


「な、なぜ……オレの攻撃が当たらない…………!?」


 オレは、思わず歯ぎしりした。

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