第11話 スカウトですか?

 オレはゴブリンの大群を撃退した功績によって、祝福の渦に包まれた。


「よくやってくれた! おかげで街の被害は最小限で済んだぞ!」

「これで安心して暮らせるわ。ありがとう!」


 街の人たちに囲まれて称えられ、ちょっとした英雄扱いだ。


「いや~、大したことじゃないっすよ」


 オレは柄にもなく謙遜してみせる。この感覚、たまらない……今まで人生やっていて、こんなに人から褒められたことが無かった。


「ふふふ……すばらしい強さだ。ボクもいつか、キミとお手合わせ願いたいものだね……また会おう」


 エアリスは、そんな冗談なのか本気なのかわからない一言を放って消えていった。あいつは、ゴブリンよりずっと強そうだ……本能でそう感じ取った。


 そして、エアリスと入れ替わるようにしてユリカが現れた。オレの胸が高鳴る。


「話は聞いたよ~。大手柄だネ☆」

「やっと来たか! 約束だ約束ッ! 姫様を紹介してくれ! 早く!」


 オレは再び、ユリカの両肩をガッシとつかむ……あれっ? この女、オレのリュックを持ってないぞ?


「お、オレのリュックはどうしたぁ!?」


 たたみかけるようなオレの詰問に対して、ユリカは「チッチッチッ」と人差し指を立てて、


「荷物はちゃ~んと、お城で預かってもらってるから大丈夫だよ~。これから2人でお城に戻るよ~?」


と、言いつつニヤリと笑った。それなら別にいいんだけど、何だかイラッとした。

 そこへ、新たに青髪ツインテールの女の子が現れて、いきなり話しかけてきた。


「ちょ、ちょっと待って! あなた、冒険者ギルドへ登録して行ってもらえますか!?」

「あっ、ライムちゃ~ん。 ギルドへは明日に行くから、それまで待っててネ☆」


 応対するユリカ。どうやら、このライムと呼ばれた女の子は、冒険者ギルドの受付嬢のようだ……ってことは!?


「ま、まさかオレをスカウトしに来たの?」

「そうなんです! 今は国内で人手が不足していて、貴重な人材はすぐに確保しておきたいので!」


 ハキハキと答えるライム。しかし、ユリカがすかさず、ライムの首の後ろへ自らの腕を回してイヤらしい笑いを浮かべながら言った。


「この救世主ナリユキ君を見つけたのは、この私だからね~? スカウト料は、しっかりはずんでもらうからね~?」

「ちょっと待て! この世界へ転移させたのは女神フェリオで、お前はただの案内役じゃないか!」


 さすがにツッコんだ。腹黒い女め! ひょっとして金の亡者か?


「ぶ~。私がフェリオ様のお告げで、こうしてお手伝いしてるのに~」


 頬をふくらませるユリカだったが、ライムはそれをとりなすように、


「ま、まあ紹介料の件はギルドマスターに相談しておくので……それより明日、お待ちしてますね!」


と、丁寧におじぎをして去っていった。オレより年下っぽいのに、礼儀正しい女の子だったな……。


 こうして、オレとユリカは再び王城へ向かおうとした、ちょうどその時――――恐ろしい事が起こったのだ。

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