第12話 怒りのウィザード
人が功績を挙げた時、それを素直に称賛する者がいれば、逆に嫉妬する者も存在する。それは世の理だ。
後者はとても厄介なのだが……その女は、突然オレたちの前に現れて、激しく怒鳴りつけた。
「あんた、ゴブリンごときを追い払ったくらいで、いい気になってんじゃないよ!」
女はワインレッドに近い赤髪のショートカットで頭にツバの大きい三角帽子を被り、茶色のローブを身にまとっている。そして、その右手には自らの身の丈に近い長さの杖を持っており、杖の先端には赤ん坊の頭の大きさくらいの宝石が嵌っていた。魔法を使うウィザードってところか……。
「ベルファちゃ~ん。ちょっと落ち着いてよ~。彼は救世主なんだよ~?」
見かねたユリカが割って入る。しかし、ベルファと呼ばれた女――おそらく成人だろう――は、鋭い目つきでオレを睨みつけたまま叫んだ。
「あたしが、たまたま他のクエストにチャレンジしていたから、手が出せなかっただけなんだ! もし、あたしが最初にここへ戻ってきていれば、あたしの魔法でゴブリンなど全滅できていたのに! その手柄を横取りしたあげく、調子に乗りやがって……!」
「別に、調子に乗っているワケじゃないぜ。何か勘違いして……」
「黙れッ!」
オレは反論しようとしたが、ベルファの一喝で何も言えなくなった。単なるひがみに違いないのだが、凄まじい気迫だ。目が吊り上がっている。
「あんた、このままタダでこの国にいられると思うなよ? 覚悟しておきな!」
ベルファが更に怒鳴り散らす。今にも殴りかかってきそうな剣幕だ。こ、怖えぇ。
周囲の人々も、あまりの激怒に震えあがって止めることができない…………無理もない。
このベルファという女、ゴブリンを全滅できると公言するくらいだから、相当な実力者なのだろう。
「行こ行こ、ナリユキ君。このコには関わらない方がいいよ。すっごく気が短いんだから」
ユリカがオレの背中を押してくれて、ようやくその場を離れることができた。あの女は、かなりヤバいな。要注意人物だ。
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