第10話 ゴブリンとの戦い(3)

「まいったな……いくら何でも、100匹以上のゴブリンなんて、相手にできないぞ……」


 オレは思わず、ため息をついた。さすがに無理ゲーだ。

 しかし、エアリスは落ち着いていた。冷静にこう言う。


「あれだけの大群なんだ。必ず軍団を率いているリーダーがいるハズ。そいつさえ叩いてしまえば、ヤツらは総崩れになるよ」

「……なるほど。じゃあ、そのリーダーを見つけなければならないな」


 1匹残らず討伐するよりも、その方が効率が良いのは確かだ。 

 オレは、なけなしの闘志をもう一度奮い立たせ、エアリスに問う。


「リーダーは、どの辺りにいると思う?」

「おそらく、軍団の最後尾だよ。西の門の近くだろうね」


 エアリスは、そう言って道の先を指差す。


「他の衛兵の援護を待っている時間的余裕は無い。急ごう!」


 そう言って、走り出すエアリス。オレも慌てて、後を追いかける。

 ……そして、見つけた。

 西の門の近くに、腕組みをして堂々と立っている巨大なゴブリンが。

 普通のゴブリンは、身長が大人の人間の胸くらいまでしかないが、コイツは人間よりも一回りデカい。2メートル以上ありそうだ。


「ボクが他のゴブリンを引き付ける! ゴブリンキングの方を頼むよ!」


 叫びながら突進するエアリス……お前。ボクッ娘だったの?

 そんなツッコミは置いといて、この展開は望むところだ。コイツを倒せば、大手柄だ。これで、お姫様に……ムフフ♪

 ……っと! 余計な事を考えている場合じゃない。

 加速して、エアリスに襲い掛かるゴブリンたちの脇を一気に駆け抜ける。だが、ゴブリンキングは素早く反応した。門に立てかけていた棍棒を両手で一気に振り上げてきた! ヤバい!


 ゴンッ!


 鈍い音が周囲に響く。ゴブリンキングが、棍棒を振り下ろしたのだ。

 だが…………。


「あ、危ねえ……」


 オレは咄嗟に両腕を上げて、両手でしっかりと棍棒を受け止めていた。まさに、奇跡と言って良かった。

 オレは、棍棒をそのまま掴んで手前に力強く引っ張る。ゴブリンキングは、つんのめるように大きく前傾して態勢を崩し、無防備になった。今だ!

 ゴブリンキングの下顎に、オレの右アッパーが深々と突き刺さり、そして吹っ飛ばした。まるで、ボクシング漫画のワンシーンのような、迫力ある光景だった。


「ガアアアアーッ!」


 ゴブリンキングは地面に叩きつけられて転倒し、やはり一撃で決着がついた。

 その断末魔のような叫びを聞いた他のゴブリンたちは、一目散に街から逃げ出した。次から次へと。


「お見事! キミならやれると思ってたよ!」


 後ろから来たエアリスが、オレの背中を平手でバンッと叩いた。痛いって!

 こうして、オレの初陣はめでたく勝利に終わったのだった。

 よし、これで姫様のハートもゲットだぜ!

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