第8話 ゴブリンとの戦い(1)

 風を切るようなスピードで、走る、走る、走る!


 原付バイク、いや自動車くらいのスピードが出ているんじゃないだろうか? 速すぎて、転ばないようにコントロールするのが難しい。さらに、街を歩く人たちにぶつからないよう気をつけるのも大変だった。


 やがて、前方から叫び声や悲鳴が聞こえてきた。もう少しで着きそうだ。

 ……あっ、あれは!?

 前方にダークな緑色の肌をした小鬼が1匹いる。背の高さはオレの胸くらいだろうか……あれがゴブリンか!

 そのゴブリンは、両腕を振り上げて、目の前の小さな女の子に襲いかかろうとしている。女の子は逃げようとするが、石につまずいて転んでしまった……ヤバい!

 その時、無意識にオレの体が反応していた。体を前傾し、一気に加速する。


「これでも食らえぇぇーっ!」


 右肩を突き出し、ゴブリン目がけてショルダータックルをかました! ゴブリンはオレに気付いたものの、全く反応できずに直撃を浴びる。


「グアアァーッ!」


 絶叫とともにゴブリンは吹っ飛び、近くの壁に激突して動かなくなった。


「だ、大丈夫か?」


 少女の方を振り返る……よかった、カスリ傷一つ無い。

 ふぅ……間に合ったようだ。


「ありがとう、お兄ちゃん!」


 少女は、そう言って微笑んでくれた。人から感謝されたのって、何年ぶりだろうか。悪い気分じゃなかった。

 そして、改めて自分のスピードとパワーに驚いた。

 ――――これなら、十分に戦える!

 自信をつけたオレは、再び走り始めた。

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