第6話 緊急事態

 教会から20分くらい歩くと、城の入口に着いた。城の周囲には水を張った堀があり、入口から堀を跨ぐように橋が架けられている。

 そして、入口には屈強そうな衛兵が2人、それぞれ両脇に立っていた。


「こんにちは~。救世主様を連れてきたんだけど、王様いるかなぁ?」


 相変わらず、マヌケな喋り方だなぁ……と思っていたら。


「たっ、大変だぁ~っ!」


 今、オレたちが歩いてきた道とは別の道から、誰かが叫びながら走って来る。思わず、オレもユリカも衛兵たちも、みんな揃って声がする方を向く。

 走って来たのは、ウグイス色の髪の毛をポニーテールに結い上げ、革の鎧に身を包んだ女の子だった。背中には長い剣を身に着けている。どうやら騎士っぽい。


「あれっ、エアリス。どうしたの、慌てて?」


 ユリカは、この女の子の事を知っているらしい。エアリスと呼ばれた女の子は、ハアハアと荒い息を吐きながら答えた。


「や、ヤバいんだ。街の西側にある門にゴブリンの大群が攻めてきて……門の扉が、こ、壊されたんだ。ゴブリンたちは、次々と街に入って来ている。や、ヤツらが街で暴れる前に……衛兵たちを現場へ向かわせて!」


 マジかよ……街がいきなり、こんな緊急事態に陥るとは……。


「わかった、騎士団長に指示を仰いでくる!」


 衛兵の1人が、答えると同時に城の中へと走って行く。そして、それを見送るオレの袖をくいくいと引っ張るユリカ。イヤな予感がした。


「ねーねー、ナリユキく~ん。ゴブリンをやっつけてくれないの?」


 ああ、やっぱりそう言ってきたか…………。


「イヤだよ。それは、オレの仕事じゃないだろ。衛兵に任せておけば、いいじゃないか!」


 すぐさま反論する。そもそも、戦うこと自体が危険だ。何としても避けたい。だが、ユリカは食い下がる。


「フェリオ様に言われたんでしょ~? ナリユキ君は、ここの世界では、凄い力が出せるって」


 こ、こいつ……どこまでオレの事情を知っているんだ?

 う~む……。

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