第5話 驚異の跳躍力

「さあ、これから王様に会ってもらうから、ちゃんとついて来てね?」


 そう言って、教会の入口の扉へ向かってスタスタと歩いていくユリカ。


「おいおい! オレの方の都合は無視かよ!?」


 オレは、リュックを背負って慌ててユリカの後を追いかける。その時、妙な違和感を覚えた。体が……妙に軽い感じなのだ。

 さっき、女神が言っていたように、地球と比べて重力が弱くなっているからなのだろうか?

 あっという間にユリカに追いついて、一緒に扉を開けて外に出る。そこには、中世ヨーロッパを彷彿とさせる街並みが広がっていた。空だけは地球と同じだ。青い空に白い雲が広がっている。

 あの空に向かって…………試してみよう。


「ユリカ。ちょっと待ってて」


 彼女を引き留めて、リュックを地面に置く。そして、その場で思いっきりジャンプした。すると――――――


「たっ、高いいいぃぃぃっ!!」


 おそらく、10メートルくらいの高さまで跳んだのではないだろうか。高い建物が周囲に無いので、街の景色が遠くまで見えた。そして、街の中心部には、石造りの立派な城が建っていたのだ。

 オレは、景色を見渡しながらあの高さからゆっくりと着地した。


「すっご~い! さっすが救世主……あ、名前で呼んだ方がイイよね? 教えてよ~?」


 ユリカも興奮しているようだ……あ、名前ね?


「オレは、出雲成幸。17歳だ!」

「……いつも、なりゆき?」


 顎に人差し指を当てて首を傾げるユリカ。


「ちっが~う! いずもだ、い・ず・もっ!」


 ちっくしょ~。よく間違われるんだよなあ……。元の世界でも、そうだったんだよなあ……。

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