第7話 六

 すぐに、不機嫌そうな悠杜の声が聞こえた。

「いや……寝てた」

 悠杜は通話をしながら、上半身を起こす。少し細身の裸身がシーツの中から現れた。

「ああ、分かった。じゃあな」

 不機嫌そうに、悠杜は通話を終えた。そして携帯をサイドテーブルの上に置く。

「急用?」

 透明感のある少女の声が聞こえた。

「いや、高志から」

 悠杜は”親友”の名前を口にした。

「リリを迎えに行くって、それだけだ」

「そう」

 悠杜は声のする方を見た。窓辺にあるバンブー素材のソファーに腰掛ける、恋人の亜瑚の姿が目に入る。

「どうするかな……」

 そう呟きながら、悠杜の上半身が力なくベッドの上に倒れこむ。その様子を見て、亜瑚はソファーから立ち上がった。長い髪が、光を受けて柔らかに動く。そのままベッドサイドへ向かって歩き出す。そして、悠杜の側に腰かけた。

「もう少し寝る?」

「いや、目が覚めた」

 悠杜は自分を覗き込む亜瑚を見る。キレイな造作をした顔と、スタイルの良い体を覆う柔らかなチェック柄のキャミソールとスカートが視界を占領した。

「なんで服着てるんだ?」

 そう尋ねながら、悠杜は腕を伸ばし亜瑚の体に回す。

「三時間も裸でいる趣味はないわよ」

 亜瑚の言葉で、悠杜は時間の経過を知る。

「まあ、いいか」

 悠杜はそう言うと腕に力を入れ、亜湖の身体を引き寄せた。小さな声を上げ、亜瑚は悠杜の体の上に倒れこむ。

「脱がすの好きだし」

 亜瑚の耳元で悠杜が囁く。

 悠杜は身をよじり、亜瑚の体をベッドの上に置くと、今度は自分が覆いかぶさった。悠杜は亜瑚の形の良い唇に自分の唇を重ね、その感触を堪能する。

 亜瑚は悠杜の身体に腕を回し、悠杜を求める。三時間程前に抱かれたばかりだが、快楽を知る身体は、簡単に恋人を受け入れる。

 ここ数日の悠杜の様子が変だと亜瑚は思う。だが、それを口にすることはなかった。それは、悠杜が望まないことだと理解しているからだ。

 亜瑚の唇を堪能した悠杜は、ゆっくりと服を脱がし始める。

 この五日間、悠杜は毎日、亜瑚を抱いていた。夏休み前の為、授業は午前中しかない。ホームルームが終わると、亜瑚を連れて制服のままホテルへと向かう。普段の悠杜なら、制服を着たままとか放課後とかは絶対に有り得ないことだ。何か悩みが有るのかもしれないと考えるが、亜瑚にはそれを知る術はなく、ただ悠杜が求めるまま受け入れるだけだった。

 連日、悠杜は亜瑚を抱き、その後は死んだように眠り続ける。

「ん……はる…と」

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