仕切り直して四杯目 だからクローバーは幸運を呼ぶ。
「想像で良ければ、これだろうって答えはあるぜ」
「見当が付くってか?」
「葛さ」
「えっ? クズ?」
「そう。どこにでも生える葛だよ」
「葛をどう使う?」
「まず考えてくれ。ヨモギだろうとアカサだろうと、硝酸は地中から吸収するしかない」
「そりゃそうだろう」
「田畑に連作障害があるように、山や野原でも土地は瘦せて行くもんだ」
「道理だな」
「毎年硝石製造を続けるには、硝酸供給源を安定させる必要があるのさ」
「意味は分かるが、どうするんだ?」
「畑のことを考えて見なよ。連作障害の対策はどうしてる」
「休耕地や牧草地にしたり、豆を植えたり……」
「そうやって土地を休めたり、回復させたりするよな。何で豆を植えるか知ってるか?」
「今、土地を休めるためだって――」
「休めるだけなら休耕地でいい。敢えて豆を植えるのは理由があるんだ。マメ科の植物は根に
「……」
「その瘤に驚くべき秘密があるのさ」
「だから、何だ?」
「根瘤の中には硝化バクテリアが棲んでいるのさ。驚くべきことにマメ科植物と硝化バクテリアの間には共生関係が成立している。植物は水と空気、光合成生成物を硝化バクテリアに供給し、引き換えに空気中の窒素からアンモニアを作ってもらうんだ」
「だから豆は瘦せた土地でも平気で成長するのか」
「そう。輪作地で豆を育てたら、収穫した後に葉や茎を刻んで土にすき込んでしまえばよい肥料になるのさ」
「そういうことか」
「さっき牧草地にすると言っていたけど、牧草の代表格であるクローバーもマメ科の植物だからね」
「そんなの社会科の授業では習わなかったぞ!」
「小中学校の教科書って、表面的な事実だけを教えて、その理由とか真の意味を教えてくれないんだよね」
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