仕切り直して三杯目 秘伝漏らすべからず。
「どう比べても五箇山の培養法に勝る手段はなかったんだ。材料にほとんど金がかからないしね。山野草のヨモギやアカソなどを混ぜて入れていたと記録されている。培養土から成分を煮出すときも、灰汁は山の木を燃やせば簡単に手に入るしね」
「ヨモギやアカソというのは何のために入れるんだ」
「カリウムが当然含まれている。ヨモギは身の回りの植物の中ではカリウム含有率が高いそうだ。もう一つ、硝酸イオンを含んでいるのが、これら植物を入れる理由だろう」
「科学的に理に適っているんだな」
「江戸時代の話になるが、加賀藩の命令で五箇山の庄屋が硝石製造のノウハウを書面にして差し出したことがある。『五ヶ山焔硝出来之次第書上申帳』というんだが、培養法について事細かに記録されているんだ」
「なるほどね。加賀藩としてはノウハウを聞き出して、他でも広めて硝石生産量を増やしたかったのだろうが、現実にはうまく行かなかった」
「そうさ。うまく行ってれば加賀藩全体に硝石産地が広がっていたはずだからな」
「どうしてかな」
「五箇山の庄屋も馬鹿じゃない。秘密の一部は隠し通したんだろうさ」
「ふーん。どんな秘密かねえ……?」
私が思案すると、須佐が
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