八杯目 八雲立つで杯を伏せる。

 クシナダヒメを娶ったスサノヲは日本最古の和歌を詠む。


『八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣え』


「くどい歌たぞ。下手糞め」


 須佐はもはやダウン状態だ。


「お前呑み過ぎだな。水をもらえ、水を」


 八雲立つは出雲の枕詞。製鉄のためにそこら中で炭を焼いていたからだといわれる。煙ぼうぼう。


 八重垣というのは連れてきた妻を囲うために築いた壁だという説があるが、どうかね。乗り越えれば出入りできるよね。


 それよりも鉄穴流しで作った段々畑。その段を補強した石垣のことをいっているんじゃないかなあ。


「ほれ、立派な田んぼをたくさん作ってやったぞ」って自慢しているような。


 日本最古の歌は、ロリコン勇者の自己アピールだった。そういう下種なオチで、その夜の酒盛りは締めとなった。


「帰るぞ、須佐――」


(第2章 完)

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