二杯目 八岐大蛇を三枚におろす。

 さて、先生。まずは素材の吟味から行こうか? 八岐大蛇やまたのおろちってなんだっけ?


 うん? 大蛇だいじゃ? それは間違いない。


 特徴は?


 八つの頭と八つの尾を持つってか。それから?

 八つの山と八つの谷に跨るともいわれるね。うん。


 まあ、それほどデカいってことだよね。キング〇ドラ的なラスボス感があるわ。


 八ってのは「数が多い」って解釈してもいいよね? 八百万やおよろずとか八面六臂とかね。

 お前の話は嘘八百だって? よくいうよ、先生。


 大きいじゃなくて「多い」なんだよな。こういうところから、八岐大蛇=敵対集団説なんてのが出てくる。集団て考え方には賛成する? まあね。そんなにデカい蛇はいないだろうってね。


 そのサイズになると生物の範疇には収まらないわな。集団か、自然現象か?


 うん。大蛇を洪水や川の流れの比喩と見る説もあるね。ほう、それにもまあまあ賛成だと。まあまあとは煮え切らないが。


 じゃあ「集団」の方はどういう正体を考えてるの? 「穴師」集団だって? 穴師というと鉱業に従事する山師のことだね。

 なるほど山師が徒党を組んで暴れていたって言いたいのね。そんなに単純じゃない?


 ああ、穴師の生活が里人の生活を侵害し始めたということね。お互い生活圏が別々だったらよかったが、だんだん開拓が進んで生活圏が重なるようになっちまった。畑と野生動物のせめぎ合いみたいに。


 はい、出ました! 「鉄穴かんな流し」ね。穴師がこれをやるから里が水害に見舞われると。そこで、さっきの大蛇イコール水害説と結びつくって塩梅ね。

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