第6話 カフェでの再会

 翌日の学校では、いつもどおり仲良し4人組で下校した。

「へぇ、そいつヤバくない? 絶対関わらんほうがいいって」

「マジで璃乃、メンケアしてもらった方がいいよ」

 アタシが昨日のことを話すと、藍那あいな美央みおが口々に言う。

 藍那は、本名、鬼頭きとう藍那あいなといって、名前に『鬼』が入っているだけに、『小悪魔系』なメイクが特徴的だ。いまは制服だが、私服は肩出しトップスとか、露出の多い服を着て、カラコンや付けまつ毛などもつける。そして、それがまた妙に似合う。

 対して、丹羽にわ美央みおは、分類するなら『姫系』だ。低身長を生かして、花柄でフリルのついたドレスが似合う子だ。


「ありがとう。でも、昨日、癒やしの澄佳にしっかりメンケアしてもらったから大丈夫」

 アタシは、澄佳に愚痴を聞いてもらい、それから一晩寝て、ずいぶんとスッキリした。なお、『メンケア』とは『タルをする』ことである。

「そんな、私だって、璃乃とお茶して癒やされたよ」と、澄佳。


 今枝いまえだ澄佳すみかは、分類するなら清楚系だ。清楚というだけあっていちばんメイクはナチュラルだが、充分可愛い。さらに、手足は細いのに出るところは出ている。4人でいちばんモテるんじゃないかとアタシは思う。

 かくいうアタシ、花咲はなさき璃乃りのは、お姉系ギャルらしい。身長が高いので、美央みたいなフリルは似合わない。白や黒のモノトーンの服が似合うとよく言われて、高身長ということもあって落ち着いてみられる。性格は全然お姉系じゃなくて、苗字そのままに頭の中はお花畑だけど、藍那が言うには「それがギャップ萌え」らしい。


「でもさ、潮高のような勉強しかできないカタブツとは、かっこよくてお金持ってても無理だわぁ」

「え? でも藍那、将来高収入高学歴のイケメンとしか結婚しないって言っとらんかった?」 

「高学歴と勉強しかできんのとは、全然違うって~、美央」

「それな! 璃乃はさすが分かっとる。璃乃は『なごや男子』の道橋みちはしくんみたいなのがタイプだもんね!」

「結局、顔じゃん! キャハハ」


 ギャルたちの会話は今日も弾む。

 みんな顔は可愛いけど彼氏はいないので、理想の彼氏像で女子トークに花が咲く。これがアタシにとっての『デトックス』になっている。

 相変わらず授業は退屈だけど、学校が楽しく思えるのはやっぱり友達のおかげだ。

 

「じゃあねー」

 江南駅で、アタシと澄佳は、藍那と美央と別れる。家の方向が逆で、藍那たちは名古屋方面なのだ。


「澄佳、今日もマリーズコーヒーに行かない? 新作のミックスベリー・フラッペが今日から発売なんだって!」

「いいね! うちの近く、マリーズないからさ」

 アタシたちは2日連続で、同じ店に足を運ぶ。ともに帰宅部のアタシたちにとっては、道草みちくさを食うのは結構日常茶飯事だったりするけど。


 新作の解禁日とあって、平日の割に店内は賑わっており、レジには行列ができている。そして、困ったことに2人席が空いていない。

 新作を飲みたいのがきっかけだが、それ以上に、澄佳と2人で他愛たわいもない話をするのが目的なのだ。イートインができなければ、来店した意味の半分以上を失う。

 カウンター席でもいいが、席は1個飛びに埋まっている。


 せっかく来たんだし待とうか、と思った矢先だった。一瞬目を疑った。


 昨日助けてくれた、例の潮高校の男子が座って、ミックスベリー・フラッペを飲んでいたのだ。しかも、憎たらしいことに、2人席を独占している。

「あの人、昨日の人じゃない? 混んでるのに勉強してるって……」

 穏やかな澄佳ですらも男子の非常識な行動に毒を吐いた。

 アタシは、ふつふつとイライラが蘇ってくる。たまらず、つかつかと歩み寄った。

「ええ、なんであんたがマリーズコーヒーにいんの!?」

 その後、この男子から発せられた言葉にアタシは耳を疑った。


「はて、君たちは誰だったか?」

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