第10話 闘いの終わり

 私は不思議な感覚を味わっていた。先ほどまでよけるしかできなかったダラスの攻撃を今は受け流すことが出来ている。それに私が一発殴るたびにダラスがよろけている。きっとご主人様を守るために彼女の肩を掴んだ時頭の中で鳴り響いた解錠音となにか関係があるのだろう。ならばこれは私個人の力ではない、ご主人様に与えていただいた力なのだ。


 とうとうダラスは攻撃をやめ、初めてガードの体勢を取った。しかし臆することなくそこに拳を叩きこむ、そしてガードが緩みダラスの顔が見えた時、私はそこに向けて渾身の蹴りを叩きこんだ。それが決定打となりダラスは意識こそまだあるものの起き上がることが出来なくなった。


「お前、どこにそんな力かくしてやがった」


「私の力ではありません。ご主人様にいただいた力です」


「何だよそれ聞いたことねぇよ」


 それ以上ダラスはしゃべることはなかった。私はよろよろと歩きそして倒れた。


「ウー大丈夫か」


 地面に激突する寸前でご主人様が抱きかかえてくださった。


「私やりました。私たちの勝ちです」


「ああ、そうだな。でも今はウーのことが心配だよ」


「そんな、力をお借りしただけでなくお情けまでいただくとは」


 この場は一件落着かと思ったがまだやることが一つ残っていた。私は息を大きく吸い込むと最後の力を振り絞って叫んだ。


「あなたたちのボスは倒れました。この場は私たちの勝利です。そしてもしこの場に私と同じように力を欲する者がいるのなら、我が主に続きなさい」


 きっとこの盗賊団は奴隷身分であった者たちがそれぞれの主人から逃げた先に寄せ集まり構成されているのだろう。それでなければ『同族の無念』なんて言葉が出てくるはずはない。が実際は勘が偶然当たっただけだ。それでも確かにここにいるものの心を動かしたに違いない。私はそう確信し、再び眠りに就いた。


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