第5話

▫︎◇▫︎


 戦場に出た私は、何人もの人間を殺した。


 ーーー死にたくない、死にたくない死にたくない、死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない、死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない………!!


 私の身体を後ろから引っ張る黒い手の不協和音は今日も残念なことに健在だ。

 けれど、休暇明け故か身体の調子が良く、いつもの数倍人間を殺せた。

 ふっと自分の中にある相棒の重力が増し、私の頭に昨日男にされた質問が頭の中に響く。

 その瞬間、黒い手の不協和音はピタッと音を消した。


『お姉さんは武器を握ることが好きですか?』


 私は武器に愛されている。

 だから、私は武器が好き。

 武器の重さは変わらない。けれど、重く感じる武器をブンと無理矢理に振り回して、私は敵の首を刎ねる。

 重く感じるようになってしまった相棒は、私の身体を振り回す。


『お姉さんは、戦争がお好きですか』

『ーーー好きよ』


 私は戦争が好き。

 だから、戦場にいる。


 男の質問を振り切るようにして武器を振るが、今度は全員に避けられてしまった。不覚だ。


『嘘ですね。お姉さんは戦争がお嫌いです』


 違う。

 そう言いたかったのにも関わらず、私はあの時彼に口答えできなかった。

 ふわっと武器を逆回転させ、目の前にいた5人の胴に、刃を走らせる。真っ赤な花が咲いて、男たちは身体を痙攣させた。


『お姉さんは自分のことに無関心なのですね』


 そんなことはない。

 血塗れの男たちを見下ろしながら、私はぎゅっと大鎌を握る手を強める。


『私には、お姉さんが自分のことを大事にしていないように思えます』


 私は私のことを何よりも大事にしている。

 だって私は、生き残らなくてはならないから………。

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