日記: GYAO!が逝ってしまった春は憂鬱

 無料映画配信サービスのGYAO!が今日17時をもってサービス終了してしまった。何故だ。


 厳密に言えば金を払うコンテンツもあるけど、みんなその辺にはほぼ触れず、百円をドブに捨てたくないからレンタルビデオ屋でも借りないZ級映画のTwitter上映会なんかに使っていたと思う。あ、この段落でもうサ終の理由が推測できたぞ。


 アカデミーの時期になれば過去の受賞作を配信し、有名監督の新作が上映されれば過去作を配信し、その功績を塗り潰すようにサメ映画特集やオゾンビや巨乳ドラゴンやデビルマンなどのクソ映画を何故かたくさん配信してくれていた。


 布教にもちょうどよくて、話題にあげてダイマするほどじゃないんだけど無料になってれば「そういえばこれ面白いんですよ。今月無料だしどうですか」くらいの勧め方ができてすごくありがたかった。


 でも、一番いいのは敢えて挙げるようなお勧めポイントが見つからないけど好きな映画とか、全体通して見るほどじゃないけどこのワンシーンはすごく好きといい映画を手軽に観られることだった。

 ブラウンバニーとかアメリカンスリープオーバーとかDVDを手に入れるのも一苦労な映画もやってくれたし。



 一番GYAOに世話になったのはコロナ禍真っ只中のときだったと思う。

 ステイホームだし出勤も減ったしひとに会うのも憚られるしというとき、映画を一本観ると一日のデイリーミッションはとりあえず完遂したような錯覚を覚えられる。錯覚だよ。


 独りの時間がめちゃくちゃ充実してしまうと、ひとに会わなくて辛いという感覚は全くなく、誰とも連絡を取らずに社会から断絶されるのを推奨されるとは何て素晴らしいんだって気分になった。


 緊急事態宣言が解かれて徐々に付き合いが増えてコロナ禍辛かったねーという話になると、疎外感と鬱陶しさを覚えてしまう。



 今年の初めピンク・クラウドという映画を観たときにそれを思い出した。

 コロナ禍を予見したように致死性の有毒ガスのピンク色の雲が世界を覆って永遠に人類がステイホームを強いられるという話。


 主人公夫婦の夫の方は最初は無理にオンラインで人間関係を繋ごうとしたりしてしくじりつつ、何となく現場に順応していくけど、妻の方は生身のひとに会いたい、こんな生活をやめて旅行に行きたいとだんだん病んでしまう。


 妻が夫を冷たいとか無責任だとか責めるときに、緊急事態宣言が終わった直後のいたたまれなさを思い出してしまった。


 大昔の地球で強かった恐竜が絶滅して哺乳類が台頭したように、環境次第で生きやすい性質の人間も変わる。

 コロナの始まりと終わりはそれを改めて感じさせたなと思う。



 押し付けがましい明るさの春が来て、気が滅入るけどしょうがないので頑張っていくしかない。

 春が終わると〆切が来てしまうのだ!

 夏までの〆切もできたんですが。


 とりあえずGYAO!を偲んでデビルシャークのDVDでも買おうか。

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