シン・仮面ライダー

 シンシリーズ年々ヲタク度が上がってないか!?


 コテコテな昭和を令和の映像でやる、スタイリッシュでトンチキなヲタクムービー。

 最初から山の上からバーンと現れる仮面ライダー1号とか、襲い掛かるショッカーを下からのアングルで映したりとか、昭和ライダーのオマージュが多い。

 それを令和の映像技術でやるから物凄くカッコいい。


 仮面ライダー2号が先に「変身!」と言ったり小ネタもオマージュが多い。昭和ライダーは2号役の俳優さんがバイクに乗れなくて、ベルトに風を送って変身というギミックが使えなかったので代わりに変身ポーズができたとか。



 ショッカーが黒コートにフルフェイスアーマーになってたりすごくカッコいいんだけど、出て来る怪人の4/5くらいはテンションが異常。冷静に観ればいいのか笑っていいのかわからない。いや、面白いんですが……。

 サソリオーグ……何者?



 殺人ピエロみたいな謎のハイテンションな敵たちはともかく、話自体はすごく常に正義と悪の違いは何かを考え続けるシリアスなものだった。


 PG12なのでゴア描写は多いというか血飛沫は結構飛ぶんだけど、大人向けならグロくしとけばいいんでしょ?という露悪的な安易さは一切ない。


 作中でライダーの赤いマフラーは力に溺れず他人を助けるヒーローの象徴として使われるんだけど、生々しい血飛沫も同じ色彩をしている。


 敵だろうが怪人だろうが何かを傷つけてることに変わりないよ。その上でヒーローってどうして名乗れるの?という厳しい問いとして使われてる印象があった。



 シンカメでの改造人間は、昭和の改造されたから社会から爪弾きされた者たちじゃなく、元々社会からの逸脱者だから改造を受け入れたという風に変換されていた。

 敵の怪人は自分たちの思う幸福を人類に押しつけて誰が傷つこうと構わない。ヒーローは自分が傷ついても他人の幸福を守ろうとする。


 ただそれだけの違いで、ヒーローが大事にする他人の幸福もやっぱり自分を基準にした考えだし、より善と悪がが一重になっている。

 悪役と同質のヒーローが善を選ぶための悲哀に転換されてるのが現代的だなと思った。



 またショッカーは個々の怪人がが一個の理念に基づいて悪行を行うんじゃなく、個々人が理想のままに行動して組織はそれをバックアップするだけだ。

 双方実現したら理念の矛盾で衝突しそうな怪人同士でも個々に探求を続けさせる。野放し。

 個人主義で、悪の組織すらも個人>組織の悪なのもすごく現代っぽいなと思った。


 人間を精神だけの存在に変えて、嘘偽りがない本能だけの世界にするという理想を掲げる怪人が登場する。

 実際にそれを体験したヒロインが地獄だと語ったのが面白かった。

 善でも悪でもどうしても同族で傷つけ合う中、虚構や建前がなきゃヒーローでいられないシンカメの世界観に合ってたと思う。


 クモやハチなどの怪人が出るのは昭和ライダーへのオマージュだけど、仮面ライダークウガも平成らしいダークな作風にしつつ怪人は昭和を踏襲してたのを思い出した。



 あと、細かいとこだけど本郷猛が武骨なライダーブーツじゃなくヒールのあるブーツだったの何か好き

 男の子がみんな大好きなヒーロー!というより弱さや足取りの危なっかしさ、敵を踏み潰した後の血が糸引く踵の残忍さとかシン・仮面ライダーのヒーロー像に合ってる。一文字隼人はゴツいブーツなのもいい。


 一文字隼人めちゃくちゃよかったね。

 すずめの戸締りで芹澤が好きだったひとはハマるんじゃないでしょうか。

 彼が出てるからシンカメが重くなり過ぎずに済んだ感じがする。



 あと、エンドロールでキャストが象徴的な赤い字で表されているのもよかった。

 そして、主人公とヒロインを演じた池松壮亮と浜辺美波はひとつずつ名前が流れて、画面からフェイドアウトするまで他のキャストが一切出ない。

 対して一文字隼人役の柄本佑は他のキャストと一緒に表示される。

 孤独なヒーローと誰かとともに生きる他多数ということかな。



 池松壮亮も柄本佑もミニシアター系邦画で内省的なヒモクズ男を演るのが上手いと思ってたけど、今回は一見合わなさそうなライダーがピッタリはまっててよかった。

 いや、池松壮亮はデスノートLNWで結構トンチキな役を演っていたか。あれはデスノとしてはクソ映画でブロマンスとしては最高の映画ですよ。

 そのうちまとめたい。



 あと、シン・ウルトラマンを観た方は長澤まさみと斎藤工の変貌に度肝を抜かれると思います。抜かれてください。

 キャラ崩壊、私の好きな言葉です。

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