呪呪呪/死者をあやつるもの
めちゃくちゃ面白かった。
予告ではもっとシリアスかと思ってたんだけど、これTwitterの実況が大賑わいになる。ボンクラが大歓喜の最高ハイスピードホラーアクションだよ!
監督は新感染のヨン・サンホ。元々アニメ映画出身なので、大量のゾンビが高速で追いかけてくるようなコミックっぽいアクションが上手い。
ただアニメのときは旧統一教会問題を思わせる我は神なりとか貧困層からゾンビアポカリプスを描くソウルステーション・パンデミックとか社会派なものが多かった。
新感染もそんな雰囲気だったので、続編でアクションになったときはあー売れるとこういうのやらなきゃいけないんだなーと少しがっかりしたけど違う。
めちゃくちゃトンチキホラーアクションのひとだった。これがやりたかったのか。
一応あらすじ。
死者を操る黒魔術師により殺人が起きた。黒魔術の目的は有名製薬会社の幹部に対して、ある治験への謝罪の要求だった。
女性ジャーナリストの主人公はかつて交流があり失踪した女呪術師を探しつつ、事件に立ち向かっていくという感じ。
とにかくアクションが最高。
今までの映画でもゾンビ役にブレイクダンサーを起用してたり、今回も百体の生けるゾンビが機動隊を薙ぎ倒して駆け回る大迫力の闘争劇が観られる。
しかも、このゾンビ、普通の知能の低いやつじゃなく、呪術で操られたキョンシー的なものなので、殺しの標的以外は一切襲わず、機動隊も階段もエレベーターもバンバン越えて追っかけてくるし、タクシーを奪ってカーチェイスまでできる。無法。
でも、味方も強力。
女呪術師のソジンがとにかく最高。
心不全とかじゃなく、関節全部をバキバキに折り曲げて殺すサイコーに凶悪な呪術を使う。
しかも、怨霊限定ではなく身内に手出されたら別に生きた人間相手にも全然使う。ヤバい。
素の暴力も強い。藤本タツキの漫画にいそうな女。
ただ、トンチキさだけじゃなく、韓国映画らしい善悪で割り切れない社会派な部分もちゃんとある。
ゾンビに襲われる者たちは守りたくなる善人ではない。でも、(ひとり除き)極悪人って訳でもなく、昔は普通に頑張ってたけど、いろんなしがらみで少し道を間違ってしまったひとたち。
主人公たちも完全に正義じゃなく個人の思惑で動いてる。
韓国には恨の文化というものがあって、文字通りの恨みじゃなく、立ち向かいようもない不条理に対して振り上げた拳を自分にぶつけるしかないような虚しさを表すらしい。
この映画もそれがよく出てる。
死者の蘇生は結局終わったことの蒸し返しで、奪われたものを取り返すことはできない。呪いの本質の虚しい徒労感も感じるいいホラーだった。
あと、観て思ったけど意図的なくらい飲食のシーンがない。
コーヒーや酒を勧められる場面がいくつかあるけどどれも断ったり飲む前に問題が起きて手をつけない。
でも、最後だけラストシーンでは牛乳飲んでるひとがいる。
二度と美味いものも食えない死者の念の物語を終えて、生者の物語に変わっていくってことかなと思った。
哀しいばっかりじゃなく、「クソ金持ちがよぉ! ひと殺しといてのうのうと生きやがったよぉ! そんなん許さねえよなぁー! 呪術師として許せねえ! そん悪魔俺がぶっ殺してやるぜ!」的なブチ上がりもするので楽しんでください。
配信されたらTwitterで盛り上がってほしい。
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