ピンク・クラウド

 吸うと10秒で死に至る有毒ガスの雲に世界が覆われ、全人類が終わりのないステイホームを強いられるコロナ禍を予見したような映画。


 環境が激変しても価値観を変えられないひとは少なくない。

 実際、コロナが始まってすぐは自分のような人間関係が元々希薄な人間は順応できたけど、人付き合いが好きなひとはzoom飲み会や出会い系にハマったりつつ、生の触れ合いを求めて病みがちになるのをよく見た。


 環境が変われば適合しやすい人間性も今までの層とは変わるのは、恐竜が滅んでも人間が生き残ったように残酷な自然の掟だなと思う。


 コロナ禍を予見したような創作だとヒュー・ハウイーのWOOLやリン・マーの断絶も好き。

 でも、本作を観てるときはフリオ・コルタサルの南部高速道路を思い出した。

 渋滞で車が足止めされる中、季節が巡り、暮らしが生まれ、出産も死別も起こる、人生と人間関係の脆さと可変性を凝縮したような不条理文学の短編。


 コロナが一、二年前よりは落ち着いた今だからちょうど冷静に楽しめる映画だったな。

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