第253話
◆
「
「ええっ!?」
お義母さんの発言内容に驚きすぎて病院の中だという言うのに思わず大きな声を上げてしまった。
「わかっていると思うけど、今はそんなことは微塵も考えていないわよ」
「でも・・・どうしてですか?」
「もちろん冬樹君が理由よ・・・美晴は冬樹君が
そして、去年のお正月に帰ってきた時に海外へ行くことも考えていると言って・・・でも、私はやりたい仕事があるから海外へ行きたいのではなくて、冬樹君と美波の幸せそうな姿を見たくなかったんだと思うの。
だから、去年の夏に冬樹君と一緒に暮らすようになってからは一度も海外へ行くなんて言ってないし、妊娠して以降の美晴から進路を変えた後悔を感じることはないの」
「そこまで考えて・・・」
「だからね。美晴の母親として、逃げるように大学へ行って更に逃げるように海外で就職なんて考えていた
それと、親としてはいくら本人の希望でも滅多に会えない海外に娘が行ってしまうことは不安だし、ましてやそれが逃避だというのならなおさらでしょ。
なまじ美晴は頭が良いから小器用になんでもこなしてしまうから実現は容易だったろうし、だから逆に不安だったの」
お義母さんの言ったことは言われれば納得ができるもので、美晴さんが僕のことをどれほど深く思っていてくれていたのかは時々垣間見せてくれているし、逆に僕と付き合わなかったらどうなっていたのかというのも考えてみれば有り得そうに思えるものだ。
「だからね。冬樹君には感謝しているし、結果的には良かったと思ってる・・・おばあちゃんになるのが思いのほか早くなったけどね」
「それは・・・すみません」
「良いのよ。家族が増えることは素敵だもの。
それにしても楽しみね。手前味噌だけど美晴は才色兼備と言ってよいくらい見た目が良いくて何でもできる
「そう持ち上げられると気恥ずかしいですけど、美晴さんのこどもですからきっと聡明に育ってくれますよ」
「ふふふ、本当に楽しみね。
そう言えば、ひとつだけ不安に思っていることがあるの」
お義母さんは急に表情を真剣なものへと変えて僕を見つめてきた。
「何が不安なのでしょうか?」
「それはね・・・ちょっと、耳を貸して」
そう言うとお義母さんは僕の耳に手を当てて他の人に聞こえないように小さな声で話しかけてきた。
「
やっぱり、そういうのは教育上よくない気がするの」
あまりに話の内容が想定外ですぐに何を言われたのか理解できずにパニックになってしまって、数瞬で気持ちを切り替えて言い訳のような事を言おうとしたそのタイミングで分娩室のドアが開いて、看護師さんが出てきた。
「
元気なお子さんが生まれました!
母子ともに問題ありません!」
お義母さんになにも話すことができないまま産後の美晴さんと顔を合わせ、家で待っている家族に連絡をしてあれやこれやをしている内に時間が過ぎていった。
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