第252話
※このエピソードより時間軸基準で物語を進めるのではなく、物語の進行の状況で未来へ時間を飛ばしたり、過去へ戻ったりしていきます。詳しくは近況ノートとこの話の後書きをお読みいただければと思います。
◆
僕らが3学年に進級して迎えた一学期は、去年の騒動とは打って変わって大きな事件らしいことは何もなく、身内で言えばハルや
そして、夏休みが始まると同時に
僕も美晴さんのためにできることは何でもやる気持ちでいるけれど、大人たちから『受験生なのだから美晴さんのことは大人に任せて勉強するように』と役割をもらえないし、その様に気を遣ってもらっている以上は勉強で成果を出すことが僕の役割であると割り切ってひたすら勉強に専念していた。
8月に入り、夏土用が終わる日の夜に美晴さんが陣痛をうったえ直ぐに病院へ行くことに。
流石に美晴さんが出産するとなると勉強が手に着かず、岸元のお義母さんと一緒に病院へ行き一緒に見守ることにした。
「気持ちはわかるけど、座って落ち着いて」
何もできないのに気持ちだけが空回りして分娩室前の控え室でウロウロしていたらお義母さんから声を掛けられた。
「そうですね。僕がここで立っていても病院の方達の邪魔するだけで何もならないですよね」
「そうよ。あとは美晴と
せっかくだし、私の話に付き合ってくれない?」
お義母さんの言う通りだと思い待合室のテーブルの反対側へ座り、お義母さんと対した。
「息子になるというのに、こうやって二人で話をするのは初めてよね」
「そうですね、今までずっと美波や美晴さんや
「そうなの。いくら家族ぐるみで交流があるからって私と冬樹君だと二人きりになることはなかったし、美晴の妊娠がわかってからも常に誰かしらが一緒にいたものね」
「ちゃんとお話するべきだったのに、申し訳ありません」
「いいのよ。別に責めているわけではないから。ただの事実がそうだったなぁって話。
でも、せっかくだからお話させて」
「もちろんです」
「私はね、冬樹君に申し訳なかったと思っているの。それと、感謝ね」
「申し訳ない・・・ですか?」
「そう。去年の一学期に冬樹君が大変だったのに気付いてあげられなかったし、知った時には粗方終わっていたじゃない」
「でも、それを言い出せば
「美波は・・・そうね、たしかに自業自得な面もあったけど、あれ程ひどい目に遭わなければならないほどの事をしていたわけではなかったわね。
でも、それは
それよりも私は冬樹君の家族がおかしなことになっていると薄々察していたの。そして、察していながら自分から何かしようとしなかった・・・だから冬樹君に申し訳なかったと思っているの」
「そんな・・・お義母さんは何も悪くないですよ。悪いのは僕ら家族です。いくら家族ぐるみでの付き合いがあるからって、そこまで責任を感じないでください」
「ありがとう、冬樹君。前に大人だけで話をした時に冬樹君のご両親からも同じことを言われたわ。
でもね。どうしても思ってしまうの。あの時、私が何かできたのではないかって」
「そこまで考えてもらえているのは嬉しいですけど、本当に気に病まないでください・・・それと感謝と言ってましたけど」
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