第202話
◆
いつもと違うのは玲香の雰囲気で、神妙な面持ちで何か悪いことを言われる様な気がして不安になる。
「それで、日曜にわざわざうちに来てまでする玲香の話って何?」
「うん・・・
「そうだね。なんでか佐々木先輩は出てこなかったけど」
「それには理由があってね。あの時、美女なアキラくんを見た佐々木先輩が一目惚れしたんだっていうの」
「
なにそれっ!?」
「言葉の通りで、アキラくんが気になってしょうがなくなってみはるんがどうでもよくなったから・・・というかアキラくんの前に出るのに緊張しちゃって出てこれなくなったんだって」
「多少装ったところで、ぼくは
「そんなことない!
今までの男同士みたいな付き合いがあるから軽口叩いている男子は多いけど、本心ではアキラくんと付き合いたいって思ってる男子はいるよ」
「またまたぁ、そうやって持ち上げても・・・」
「持ち上げてないよ。アキラくんは美形だからちゃんとおめかししたらちゃんと美人なんだよ。それこそ、みはるんのカレシの冬樹君が言ってたじゃん『モデルみたい』だって」
玲香の表情は茶化す気配がない真剣な眼差しだし嘘を言っていないのはわかるけど、小学校時代からずっと『女の子の服装が似合わない』と思ってきていた固定観念と衝突して受け付けられない。それと、ずっと考えないようにしていた
数回しか会ったことがないのに、謝罪に行った時に見せてくれた笑顔に心を掴まれて、今でも時々反芻しては胸が苦しくなる・・・美晴さんも悪ふざけをしたぼくを許してくれた温厚な人で、ぼくとも良い友人になりつつあると思うから、邪魔をしたいとか奪ってやりたいなんて気持ちは微塵もないけど羨ましいと思う気持ちは拭いきれない。
「まぁ、男子たちが今までぼくを男扱いしてたから素直になれなくて、先入観がなかった佐々木先輩が好意的というのは百歩譲って理解してもさ、玲香が佐々木先輩は女性関係に問題があるみたいなことを言ってたんだよね?」
「うん、それなんだけどさ、佐々木先輩の上司というか、会社の社長の
「なるほどね・・・それで、玲香はぼくに佐々木先輩と付き合えっていうの?」
「さすがにそこまでは言わないけど、1回くらいちゃんと話をしてもらえないかなぁ・・・って」
「まぁ、話を聞くくらいは良いよ。でもふたりきりは緊張するし、絶対間がもたなくなるから玲香も一緒に付き合ってよ」
「ありがとう。それと・・・ごめん」
「別に謝ることはないよ。ぼく自身、彼氏というものに興味がないわけではないし、佐々木先輩は噂の女性関係を除けば身長が高くてかっこよくて仕事もできる人なのだからむしろ光栄かもしれないよ」
「ええ?アキラくん、カレシに興味あったの?」
「まぁ、興味を持ったのは最近・・・美晴さんと付き合うようになってからかな?」
「ああ・・・そうだね。みはるんは
「そんなところかな」
玲香は美晴さんと学科が同じで単位も重複が多いから最近はよく一緒に行動していて惚気に対して慣れている感じがするし、玲香は冬樹君のことを友達の彼氏くらいでしか考えていないだろうから平然としているのだろうけど、ぼくには少し気が重い話だ・・・
このモヤモヤした気持ちも佐々木先輩と・・・そうでなくても誰か男の人と付き合ったら晴れるのかな?
◆
アキラくんに佐々木先輩の事をお願いにきたら思いの外あっさりと受けてくれた。
みはるんと付き合うようになってからカレシに興味を持ったというのだからわからなくもない。ひとたび男女交際を意識し始めたらクリスマス目前のこの時期は焦り出すものらしいし、かく言うアタシもみはるんに当てられて興味が湧いている。
なんなら先日までナシと思っていた佐々木先輩でもいいくらいだ。一昨日会社へ行って景子先輩を交えて話した時の様子は元々持っていたイメージの軽薄な感じとは違って純な少年って感じだったし、そんな一面が有ったのかというギャップにドキッとしたのもある。
まぁ、当の佐々木先輩はアキラくんにゾッコンだし向こうからお断りだろうけど・・・
とりあえず、フラットに話し合いの場をセッティングできたのは義理を果たせたと思うし、その上親友のアキラくんを大事にしてくれそうな佐々木先輩には期待したいと思う。
あと、もしアキラくんが本当に佐々木先輩と付き合う様になったとしたらもっと色々な人に話を聞いておいた方が良いかなとも思う・・・景子先輩を疑うわけではないけど、広い意味では佐々木先輩の身内だし完全な第三者の客観的な声も聞いておきたい。
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