第176話
◆
私自身が2ヶ月くらい前に通った道で、可能性を考えても悶々としてしまうし状況が不安定だったので先々のことを考えて怖くもなった。
私の時とは違うところもあるけど、相手の
美晴ちゃんが検査薬を使うために席を外し、リビングで百合恵とふたりで待っている間ずっと沈黙していた。私は2ヶ月前の生理が来なかった時にものすごく動揺したことを思い出し、美晴ちゃんの心境を思うと軽々しい気休めを言う気にもならなかったし、百合恵は自身は身籠らなかったことも離婚の原因なので妊娠に対して思うことがある様にも思うし、沈黙が嫌な重さをもたらせていた。
美晴ちゃんが戻ってきて、実際にはそれほど経っていないけれど私と百合恵の関係ではイチニを争うほどの重苦しい時間で永遠にも感じるほどだった時間が終わった。
「お待たせしました」
そう言って持っていた検査薬を見せてくれた。予感していたけどそれは陽性を示すものだった。
「こうなったら病院へ行かないとね。
さっきも言ったけど、私で良かったら付き添うから遠慮しないでね」
「・・・ありがとうございます。
「わかったわ。じゃあ、午後は空けておくわね。
今更だけど付き添うのはお母様やお友達じゃなくて私でいいかしら?」
「はい、ぜひお願いします。母や家族には病院の検査ではっきりするまでは言いたくないですし・・・それはそれとして、私はみゆきさんのことを頼れるお友達だと思っていますけどみゆきさんは違うのですか?」
「ごめんね。たしかに私たちは友達同士だったわよね」
「美晴さん、こうなったからにはわたしも協力しますから困ったことがあったら相談してくださいね」
「はい。ありがとうございます、先生」
◆
おぼろげに予感していたもののはっきりさせるのが怖くて直視してなかった妊娠について、
迷惑をかけたくない気持ちがあり遠慮してしまっていたけど、みゆきさんの申し出はありがたく厚意に甘えさせてもらうことにした。
検査薬の結果が出てもなお冬樹くんや家族へは言う気にはなれず、先生とみゆきさんにも病院の検査結果が出るまでは他の人には言わないようにお願いした。
まだ検査薬での陽性が出ただけの状態とは言え、ここまで来たら妊娠していることを前提に今後のことを考えていかないといけない。冬樹くんがここに至って私を見限るとは考えにくいけど、いくら頭が良くお金も稼げているとは言え高校生には負担が大きい出来事だし、最悪の場合として冬樹くんから別れを切り出されることも覚悟だけはしておかないといけない。
私は喩え冬樹くんから縁を切られたとしてもこどもは産みたいと思うし、それを通すことで家族に迷惑をかけたとしてもそこだけは絶対に譲れない。
あるかもわからない未来を想像して悪いことを考えるのは良くないのでこれ以上はやめるとして、どうなるにせよ今後のことを考えると動ける内に少しでもお金を増やして貯めていきたいので
◆
12月に入り、
以前の職場の人達が那奈さんの復帰を求め会社から依願されての再就職で給与などの待遇は前より良くなっているそうだ。
骨折の後のリハビリも順調でほとんど以前の通りに動かせるようになっている。
また、相変わらず元婚約者や元風俗客や
元婚約者のお陰で那奈さんの誕生日がクリスマスイブの日だということを知れたので、迷惑をかけたお詫びや日頃のお礼も兼ねて何かプレゼントをしたいと思うのだけど、普通にアルバイトをしようとすると親権者の同意が必要になるのでできたら本意を隠して同意してもらえるようなアルバイトや、同意をもらわないでもできるお金稼ぎができないかと思う。
もちろん思い浮かぶ方法がないわけではないけど、那奈さんへプレゼントをするのに那奈さんが悲しむ事をするのは本末転倒になるので思い浮かんだ方法は実行しない。
ひとりで考えてみても浮かばないので
絵画モデルが良いのではないかと勧めてもらった。以前、芸大の人から依頼された事があったので調べたことがあるそうなのだけど、長時間同じ姿勢を維持していないといけないため大変なので意外に報酬が高いのだというし、相談次第で即金での対応をしてくれる場合もあるという。
磨いてきたので容姿には自信があるし、那奈さんへのプレゼント資金だと思えば同じ姿勢で居続けるのも耐えてみせると思い話を聞いていたら、夏菜さんに声を掛けてきた人に今モデルを募集していないか問い合わせてくれるというのでお願いした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます