第173話
◆
「・・・もしもし、起きてください。もしもし」
身体が揺すられて声を掛けられ目を覚ますと、鉄道会社の人が目の前に居た。
周囲を見ると他の乗客はおらず、どうやら寝てしまって終点まで来てしまったようだ。
「すみません、今すぐ降ります。
ところで、ここは何駅ですか?」
聞くと、乗った電車の元々の進行方向とは逆方向の終着駅で、時間からして折り返してこの駅にたどり着くまでの長い時間寝てしまっていたみたいだった。
時間を確認しようと電源を切ったままだったスマホを起動すると、電話着信があった事を告げるSMSが大量に届き、メッセージアプリの着信通知も大量に届いた。
まずは美晴さんに知らせるべく架電した。
『冬樹くん!無事!?』
「もしもし、冬樹です。心配を掛けてしまってごめんなさい。無事ではあるのですが、電車で寝てしまって終点まで寝過ごしてしまっていました」
『よかったぁ。でも、どうしてそんなに?
美波達と別れてから6時間くらい経っているよね?』
「ええ、美波達と別れてから電車に乗って座った瞬間に意識が遠のいて、さっき駅員さんに起こされて意識を取り戻した状況です」
『そんなになるほど何があったの?』
「何があったと言うほどではないですけど、クラスメイトと交流して気疲れしてしまいました」
本当は美波やハルへの敵意などに注意を払っていて疲れたのだけど、今の美晴さんに余計な心配をかけたくないので誤魔化すことにした。
『そうなの?でも、声を聞けてよかった・・・』
美晴さんの声が涙交じりで思う以上に心配をかけていたのだと察し申し訳ない気持ちが強まった。
「本当に心配をかけてしまってすみませんでした」
『ううん、良いんだよ。それよりこれから戻ってこられそう?』
話しながら駅前ロータリーの様子を見ているとタクシー乗り場は行列ができているのにタクシーは全然来ないと言った状況で、今から列んでもいつになったら乗れるのかわからない状況だった。
「乗り過ごした人が多くて全然タクシーに乗れそうにないので、初電まで待ってから帰るようにします」
『そう、でもタクシー待ちで外に居続けるよりは、どこか寒さをしのげる場所にいた方が良いよね』
あとは美晴さんから母さんにも連絡してくれるということで、言葉に甘えてお願いすることにした。警察へも相談していたとのことで美晴さんや家族だけでなく警察にも申し訳ないことをしてしまったと思う。
寒さをしのげる場所を探したものの深夜の時間帯に営業しているお店はマンガ喫茶とカラオケだけでどちらも未成年の僕では入れないと思いつつ確認したら、案の定『条例で禁止されているから』と断られてしまった。
他に駅前にはファミレスやファストフード店もあるけれど深夜は閉店するみたいだ。流石にコンビニは24時間営業しているみたいだけど、長時間滞在して良いお店ではないので悩ましい。
コンビニで少し長めに滞在し、カイロや温かい飲み物を買って風が凌げそうな場所で初電の時間になるのを待つことにした。
◆神坂
美晴お姉からお母さんへフユからの連絡があったという電話があり、その話を聞くとあたし達と別れたあと電車に乗ってすぐに疲れて寝てしまって寝過ごしてしまったという。
別れたのが19時過ぎだったから6時間くらい寝続けていたことになる。フユが疲れた要因を考えると今日は体育など肉体的に酷使する様なことはなかったから精神的なものだろうし、その精神的な負担には心当たりがありすぎる。クラスメイトのあたしや美波ちゃんへの悪意の言葉が遅効性の毒の様にフユを疲労
あたしは浮かれていた。お姉からの禅譲みたいな形とは言え生徒会長になり、フユと美波ちゃんを守れると過信していたし、同じクラスで卒業まで過ごせるということに浮ついて、クラスメイトのことを全然考えていなかった。
学校側から頼まれていたり、本人たちと気が合ったりという状況があったにせよ
だからと言ってどうすれば良いのかわからない・・・今はフユが無事見付かって良かったし、もう眠いから明日お姉や美波ちゃんに相談しよう・・・
◆
お姉ちゃんから連絡があって冬樹から電話があり無事だという事を知らされた。
ただ、わたし達と別れた直後に電車の座席に座るや否やのタイミングで意識を失って終点で起こされるまで長時間眠り続けていたという。
疲れからだろうということだけど、疲れさせた理由はクラスメイト達の春華ちゃんやわたしへの悪意ある言動だと思う。春華ちゃんは梅田さん達とずっと一緒に居てやっかまれてしまっていると思うし、わたしへはその春華ちゃんと近いという他に
春華ちゃんの事は別にしてもわたしへの悪意は織り込み割り切れていて、わたしが無視すればそれで普通の学校生活に戻ると思っていたけれど、冬樹はそうではなかったのかもしれない・・・
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