第171話
◆
あたしの立ち回りが良くなかったとは言え、悪いことをしていないのに悪意を向けられるのは凹む・・・敵対するほど明確なものではないけどクラス委員の
夏休み明けの事はまだ苦い記憶として残っているし、その時のことを思い起こさせられるのでツラくもあるのだけど、美波ちゃんやフユを守るためにはあたしが頑張らないといけないのでそこは我慢しないといけない。
そんな嫌われ者のあたしが声を掛けても、結局のところは歓迎会にはクラスの全員が参加することになった。男子は
放課後になり、あたしの名前でカラオケ店の予約をしていたため美波ちゃんと急いで移動を開始したのだけど、今回の主役であるローラン君と江藤君もあたし達についてきて、更にクラスメイトの多くがそれに合わせてついて来たため、あたしがお店へ着いたとほぼ同時に参加者の2/3くらいはお店にいる状態になってしまって予約した時間よりは早かったけど、お店側の好意ですぐにパーティールームへ通してもらえた。
開始時間の前のまだ全員が揃っていない状態でカラオケ機を使うのは気が引けたので、最初のワンドリンクの注文を聞いて回っている内に全員が揃ったので歓迎会を開始した。
ちゃんとお願いをしたこともありローラン君も江藤君も全員と一言ずつ会話をする様に動いてくれて、お願いをしていなかったけど香織ちゃんも彼らに倣って全員へ一言ずつ会話して回ってくれてるのであたしは美波ちゃんと・・・ではなく、新谷君とふたりきりになっていて、何を話せばよいのか思い浮かばず無言で周囲の声を聞いていた。
ちなみに、美波ちゃんは
「あの、春華さん」
「え?な、なにかな?」
「今日はありがとうございました。本当なら僕が率先して呼びかけたり予約したりしないといけなかったのに全部引き受けてくれて・・・」
「いいんだよ。歓迎したかったから勝手にやっただけ。
それで皆も楽しんでくれたなら良かったと思うよ」
「やっぱり、会長、いや前会長の妹さんですね。
「たしかにお姉はそんなところがあるね。あたしも知らず知らず影響を受けてたのかな?」
「そうだと思いますよ。そうじゃなかったら生徒会長への立候補なんかしませんよ。
選挙の前に僕はどうしても夏菜先輩の後に生徒会長になることが比べられて批判されるのではないかと逃げてしまって、それを春華さんへ押し付けてしまった」
「前にもそんな事を言っていたけど、適材適所だと思うよ。新谷君はトップに立ってリーダーシップを発揮するタイプじゃなくて、側にいてトップを支えるタイプなのだと自己評価した結果で副会長が良いとなったのだろうと思うし、あたしの立場で言えばちゃんと支えてくれる人がいるのは心強いよ。
だからさ、選挙の時は誰か立候補する人がいないかという流れで渋々引き受けたところもあるけど、自分で決めて立候補したのだしそこには新谷君が引き受けなかったから押し付けられたなんて気持ちは全然ないよ。
第一、本当に嫌だったら絶対に引き受けなかったよ。あたしにはあたしの考えがあって引き受けたのだから気にしないで、そして副会長として支えてよ」
◆
歓迎会が始まると春華ちゃんにお願いされていたローラン君と江藤君はそれぞれ個々に全員へ挨拶して回り始め、それを見ていた梅田さんも同様に続いてた。
そんな中、わたしは
仮に冬樹がお姉ちゃんと破局してしまった場合、わたしよりも有利な立ち位置で冬樹の隣を奪い合う強力なライバルになりそうにも思える。
それくらい大山さんは冬樹への好意を隠していないし、また冬樹の反応も悪くない。むしろわたしに対しては硬さを感じさせる・・・
しばらく、冬樹と大山さんに気を取られて気付いてなかったけど、春華ちゃんと新谷君がいい雰囲気で話していて、そこへ挨拶回りが終わった様子のローラン君と江藤君が邪魔しに突撃していた。春華ちゃんは目を回してオロオロしているので、助け舟を出すことにして春華ちゃん達の側へ寄ってローラン君たちを落ち着かせるように割って入って場を収めた。
その後は春華ちゃんの側に居て、同じく側から離れようとしないローラン君や江藤君と話をしていた。
大きい声ではないけど、カクテルパーティー効果でわたしや春華ちゃんの名前と『ビッチ』『男誑し』という悪口を言う女子の声も聞こえてきた。わたしは自分が悪かったところもあるけど、春華ちゃんまでそういう悪口の対象になるのは心苦しいし悔しい。
あと4ヶ月、このクラスで無事にやっていけるのか心配になりつつも、表向きは問題なく歓迎会が終わった。
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