第165話
◆
転校生と留学生を迎えに
「新谷君、楽しそうだけど、転校生と留学生が楽しみなの?」
「え?楽しそうですか?」
「うん、すごくいい笑顔していると思うよ」
「それは・・・まぁ、良いことがあったと言えばありましたけど、転校生と留学生は関係ないですね」
「そうなんだ。でも良いことがあるっていいね。
あたしなんか、悩み事が尽きないよ」
「そうなんですか。たしかにまだ
「まぁ、フユが家に戻ってこないのは関係が修復してないってだけじゃないから、そこはあまり気にしてないんだけど、他にも色々あってね」
「
「うん、
「『それも』ってことは他にもあるのですね。いずれにしても、協力できることは協力させてもらうので良かったら相談してくださいね」
「ありがとう。新谷君は本当に良い人だね。
とりあえず、生徒会ではすごく頼らせてもらうから、よろしくね」
「(小声)良い人・・・」
「ごめん、聞き取れなかったよ。もう一回言ってもらって良い?」
「いえ、ため息みたいなものなので気にしないでください」
「そう?
わかった・・・って、もう職員室だね」
既に馴染んできている職員室の隣の来賓室へ入ると既に転校生と留学生が来ていて、先生方も揃っていた。
「神坂さん、新谷君、面倒をかけますね。
神坂さんは生徒会長で、新谷君は副会長で頼りになりますので、困ったことがあったら頼ってくださいね。
神坂さん、新谷君、こちらが今日からクラスメイトになる江藤
ふたりのサポートをお願いします」
「はい。今塚田先生から紹介された神坂春華です。生徒会長ですけど、役員のみんなに助けてもらうタイプの会長なので頼り甲斐はないと思うけど馴染んでもらえるように頑張るので頼ってね」
「新谷健吾です。神坂さん同じでみんなと協力するスタイルの副会長ですけど、頼ってもらえるように尽力しますのでどうぞよろしくお願いします」
「ふたりとも謙遜していますけど、頼れる生徒なのでそこは安心してくださいね。
また、神坂さんたちが来る前に言ったことの繰り返しになりますけど、クラス担任の塚田先生ではカバーしきれないフォローはわたしがさせてもらいますから・・・神坂さん、新谷君、何かあったらわたしまで声を掛けてくださいね」
江藤くんもローラン君も好意的な笑顔であたしの方を見てきてなんとも照れてしまう。そして、さっきまでは楽しそうで機嫌が良かった新谷君の表情が少し険しい感じになっている・・・来賓室に来るまでの短い時間に何があったのだろう?
◆岸元美波 視点◆
塚田先生の件については春華ちゃんも
冬樹は夏休みが終わってからは表面的には親しくしてくれているけど、それは以前とは違うどこか冷たさを感じさせるもので、今も春華ちゃんが転校生達との面談で居ないからと
身のない雑談をしている内にSHRの時間になり春華ちゃんと新谷君が戻ってきて、直後に塚田先生が教室に姿を表した。
「おはようございます。今日は新たに2名このクラスに加わることになりましたので、早速紹介します。
江藤君、ローラン君、入ってください」
塚田先生が呼び込むと前の扉からふたりの男子が入ってきた。江藤君と思われる日本人とローラン君と思われる金髪碧眼の白人でどちらも冬樹や
特にローラン君の方はハリウッドの若手俳優と言われても納得するくらいにはかっこよくて、クラスの女子たちが
逆に江藤君もローラン君も明らかに春華ちゃんの方を見ているし、いくら先に顔を合わせていても短時間でふたりのハートを掴んだのはすごいと思う。新谷君も明らかに春華ちゃんを意識している感じだし、良くないことが起こるかもしれないという嫌な感じがする。
見た目通り黒髪黒瞳が江藤君で、金髪碧眼がローラン君だった。江藤君は家庭の事情で北海道から来たそうで、ローラン君はフランスのパリからの留学で卒業までは日本にいる予定で、卒業後のことはわからないけど仲良くして欲しいという挨拶をしていた。
「それで、2人の席ですが一番うしろの空いている席で神坂さんと新谷君の間とその後ろ」
「じゃあ、ボクがハルカの隣に」
「いや、なんでローラン君が?
俺も神坂さんの隣が良いよ!」
「でも、ボクは来たばかりで日本に不慣れだし先程親しくなったハルカにフォローしてもらいたいかな?」
「俺だって東京は始めてで不安だよ!」
なにかふたりで席の取り合いの口論が始まってしまった。
30秒ほど経ったところで、梅田さんが手を挙げて自分が後ろの空いている席へ移動するから春華ちゃんの両隣をそれぞれが座れば良いと提案したらふたりとも納得し、春華ちゃんの左でわたしの目の前になる元々梅田さんの席だった方に江藤君が、春華ちゃんの右側で反対隣が新谷君になる方がローラン君の席になり、その後ろで冬樹の右隣に梅田さんという配置になった。
クラスの全員がふたりとも春華ちゃん目当てだというのは理解したと思うけど、当の春華ちゃんはそれに気付かず困惑の表情を隠そうとしつつも隠しきれていない感じで後ろの席のわたし達へ助けを求めるような視線を送ってきて、微笑ましく思う・・・この状況に適切な表現があったような・・・
そう言えば、前に春華ちゃんが言ってたな・・・『ラブコメの波動を感じる』って。
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