第132話
◆
昨日倒れて病院へ行ったこともあり無理をしないようにいつもよりも余裕を持って行動していて講堂へも早めに入って準備をしていたら声を掛けられた。
「みはるん、今日さ、飲み会があるんだけど来ない?」
声を掛けてきたのは髪を紫に染めてメイクも服装も派手で露出過多な容貌の
「ごめんなさい。せっかく誘ってもらったけど、やらないといけないことがあるし、体調も良くないし遠慮させてもらいますね」
「みはるんはいっつも用事があるとか言って来ないけどさ、アタシのこと嫌いなの?」
嫌いとまでは言わないけど避けたいのは間違いない。とは言え、大人としてそれを言うのは憚られるので返答に窮する。
「別に嫌いではないですよ。基本的に用事があるのです」
「とか言ってさ、知ってるんだよ。みはるん、夏休み前にアタシが誘った時は断ってそのまま自宅に帰って特に何もしてなかったの」
たしかに夏休みに入る前にもこの様に誘われて、特に用事があったわけではなかったけど用事があるからと断った事があった。
「人には言いづらい家で作業することを行っているんですよ」
「なになに?動画配信者やってるとか?マンガ描いているとか?」
「だから言いづらいと言っていますよね?
まぁ、想像するだけなら良いですし、そう思ってもらえればと思います」
「でもさー、入学してすぐの時の一回だけで、それ以降は一度も誘いに乗ってくれないじゃん。
アタシはみはるんと仲良くしたいんよ」
「でも、今日は困ります」
「わかったよー。じゃあさ、今度予定を合わせるようにするからさ、連絡先教えてよ。
メッセージのアプリ使っているでしょ?」
そんな感じで押し切られるように津島さんとメッセージの連絡先交換を行った。
そうしたらすぐにグループにも登録され、その参加メンバーを見るとわかる人がほとんどおらず、わかる人の多くは津島さんとよく一緒に行動している派手な人たちで、わからない人もプロフィール画像がいかにも派手で津島さんと同じ系統の人が多いなという印象だった。
更にそのグループの複数の人達から私の予定がいつ空いているのかや絶対に飲み会に参加するようにという予定の調整をするように仕向けられ、仕方なく明後日の金曜日に付き合うことにしてしまった。
◆
昨日美晴さんが倒れたと聞いた時は心配だったけど、いわゆる心労で病気とかもなく当日の内に退院したと連絡をもらってホッとしていたら、みゆきから自宅へ戻ったという連絡をもらった。
そもそも美晴さんが倒れた当日に
そういうことでみゆきの居候先のマンションの家主である冬樹君に理由を聞いてみたら、冬樹君の子供を身籠ったかもしれないという騒動があり美晴さんが倒れてしまったことに責任を感じて距離を置こうとしたらしい。
たしかにみゆきが精神的に不安定になって冬樹君に迫って肌を重ねてしまったことがあったし、みゆきは男っ気がないと言うか恋愛対象がわたしだと言うので可能性がある相手が冬樹君だけだったと言うのもわかるし、妊娠したかもしれないと焦って美晴さんに縋ってしまったのもわかる・・・とは言え、よりにもよって自分の付き合っている相手の子供を身籠ったかもしれないなんて相談された美晴さんの心中を考えるとみゆきの軽率さに呆れるし、苛立たしさも覚える。
とは言え、わたしが何度も連絡するように言っていたのを無視していたのに、自宅へ戻ってくれたのはご両親から相談されていた身としてはホッとする部分もある。
生徒達がほとんど下校して、わたしも帰ろうかと思っていたところでお義姉さんからのメッセージの着信があった。
【今度の土日のどちらか空いているかしら?】
◆岸元
昨日はお姉ちゃんの運ばれた病院へ行ったからそれどころではなかったけど、今日からは用事がなければ春華ちゃんを待って一緒に帰ることにしていて、特別教室は他の生徒と鉢合わせしないように通常のクラスが終わる少し前に終わるので、わたしが先に学校を出て人目に付きにくい場所で待っている。
ほどなくして春華ちゃんがやってきた。
「お待たせ。まだ駅にはうちの生徒がいるだろうから少しここで待とうか」
「うん、気を遣ってくれてありがとう。待たせちゃってごめんね」
「いいんだよ。あたし達の仲じゃない。話をしてたら時間なんてすぐ過ぎるよ」
「それでも、ありがとう。春華ちゃんに何かあったら絶対に協力するからね」
「うん、何もないと良いけどその時はよろしくね。
それにしても、フユと
「うん、まさかそんな事をしていたなんてね・・・」
「まぁ、妊娠は間違いだったんだし、美晴お姉とフユがちゃんと付き合い始めたきっかけをくれたんだから結果的には良かったかな?
美波ちゃん的には納得できないかもしれないけど・・・」
「そうだね・・・今のところはね。
だからと言って将来はわからないよ?」
「また、そんなこと言ってー。
美波ちゃん、まだフユのこと諦めてないの?」
「チャンスがあれば・・・ね?」
素直な気持ちを春華ちゃんに伝えた。
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