第119話
◆
思いのほか早い時間におしゃれを決め込んだ岸元さん、それに
そこで岸元さんと春華さんのじゃれ合いを見ていた冬樹が・・・私が初めて見た時と同じ様な・・・笑顔を見せていた。
衝撃的だった。ただでさえ理知的で優しげでカッコよい冬樹が神々しく見えた。
それと同時に、そんな風に見てもらえる岸元さん達が恨めしく思えてならなかった。
『その笑顔を私に向けて欲しい』
心の奥底からそう思った。
でも、どうすれば良いのか皆目見当が付かない・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
一瞬だったのか、数分経っていたのか意識を取り戻した時には冬樹たちは視界から居なくなっていた。
少し周囲を探してみたけれど、冬樹たちを見付けることはできなかった。
◆
月のものが来たため、
幸い軽い方なので動くのには支障がない上に何もしないことが落ち着かなかったので、
急に思い付いてのアポイントがない訪問だったのでしょうがないのだけど、誰も在宅しておらず空振りになってしまったため、帰ろうとしたところで声を掛けられた。
「うちに何か御用ですか?」
見た目高校生か大学生くらいの女の子。もしかすると、二之宮凪沙さんかも知れない
「二之宮凪沙さんとお話をしたくて、伺わせていただいたのだけど、あなたが凪沙さんかしら?」
「はい、そうですが、お姉さんは何者ですか?」
「ごめんなさい。名乗るのが遅れてしまったわね。
鷺ノ宮隆史の姉、鷺ノ宮那奈と言います」
「そうですか・・・お姉さんが私に会いに来たということは隆史から話を聞いたのでしょうか?」
「ええ、あなたについて興味深い話を聞いたわ」
「わかりました。ここで話をするのは難なので、近くのカフェかなにかでいいですか?」
「押し掛けたのは私の方だし、お話をしてもらえるなら構わないですよ」
二之宮凪沙さんと近くのファミレスまで移動し、ふたり分の飲み物を注文し終えるまでほとんど口を開かず、飲み物が用意されたところで話を切り出した。
「二之宮さんが隆史の弱みを作って、逆らえなくなった隆史に一連の事件を起こさせたと聞いたのだけど本当かしら?」
「仮にそれが本当だとして、私が『はい』とでも言うと思いますか?」
「きっと言わないでしょうね。
でも、それでもわかることがあるわ」
「お伺いしても?」
「あなたは隆史の姉である私が目の前に現れたというのに、恨み言のひとつも言うことなく応じた。
そして、特に気負うことなく『隆史』という名前を口にしている」
「既にご両親からの謝罪はいただいていますし、付き合いがあった時の呼び方を変えないのは普通ではないですか?」
「そうかもしれませんね。それでいいと思います。
私は
「それ、どういう意味ですか?」
思っていた通り、神坂さんの名前を出したら雰囲気が豹変し睨み付けてきた。
「どうもこうも今言った通りです。
私は神坂さんと情報交換を行っていて、わかったことは共有しているのですよ。
なので、私が二之宮さんと会ってこういうお話をしましたと言うだけです。
それを聞いた神坂さんがどう思われるかは、私の知るところではないですよ」
私の中で直感的に二之宮さんが元凶であるということを感じ取り、恨みの感情も乗ってキツイ言い方をしてしまったけれども、しょうがないところがあると思う。
二之宮さんは睨み続けるだけで言葉を発さない状態になったので、用が済んだとばかりに席を立つことにした。
「お聞きしたいことは聞けたので、私はこれで失礼しますね。
二之宮さんの分も代金は払っていきますので、良かったらゆっくりしていってください」
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