第116話

岸元美波きしもとみなみ 視点◆


冬樹ふゆきが学校へ行くかどうかは別にして、春華はるかちゃんと夏菜かなお姉ちゃんにも声を掛けて5人でどこかへ遊びに行かない?」



春華ちゃんは冬樹の家に泊まった時のことを引き摺っているみたいだし、夏菜お姉ちゃんも春華ちゃんほどではないにしても気にしているようだし、まずは身内のわだかまりを軽くする方が良いかなと思い付いた。



「いきなり学校へ行くとお姉ちゃんが気にしているように問題が起こるかもしれないし、身内だけで過ごしてみるのはどうかな?

 春華ちゃんたちとはビデオチャットでやり取りもしているのだし、夏休み前とは違って大丈夫なんじゃないかな?」



「たしかに、ハルや姉さんと過ごすのは良いと思う。

 美晴みはるさんはどう思いますか?」



「そうね。春華ちゃんたちなら良いと思うわ。

 ここのところのすれ違いを正していくのが第一よね」



「でしょ?

 それでさ、明日からの3連休の何処かでタイミングが合うなら遊びに行かない?」



「それはいきなりすぎじゃないか?

 ハルや姉さんの都合がつくかな?」



「駄目なら駄目で来週でもいいし、とりあえず聞いてみるのはどうかな?」



「たしかに、駄目ならそれでも良いか・・・美晴さんはどう思う?」



「私たちは空いているし、良いんじゃないかしら?」



・・・・・・か、お姉ちゃんと冬樹が付き合っていることを垣間見せられてしまう。



「じゃあ、わたしが春華ちゃんたちに聞いて連絡するね」




神坂かみさか春華 視点◆


今日も生徒会執行部の手伝いをし、その流れでお姉と一緒に帰宅すると、直後に美波ちゃんがやってきた。



「あのさ、明日からの3連休でどこか1日空いてる日はない?

 冬樹とお姉ちゃんと5人でどこかへ遊びに行こうって話なんだけどさ!」



美波ちゃんの勢いと嬉しそうかつ楽しそうな雰囲気で悪い話ではないのだろうと思ったけど、まさかフユと遊びに行くという話だとは思わなかった。



「え?フユが5人で遊びに行こうって言ったの?」



「言い出しのはわたしだけど、良いねって賛成してくれたよ」



「それは本当なのか?美波」



「うん、そんなことで嘘をついてもしょうがないじゃない。

 何言っているの、夏菜お姉ちゃん」



お姉も意外だった様で、美波ちゃんへ聞き返してた。


でも、お姉が入院した時には顔を合わせたし、最近はビデオチャットでやり取りをするようになったし、フユがあたしたちと前向きに付き合おうって思ってくれているのだろうと考えると嬉しく思う。


3連休中の予定はない・・・すーちゃんやよっちゃんを始めとしたクラスメイトたちとはまだギクシャクしていて休日に遊ぶと言う雰囲気まではできていない・・・から、その話には乗っかりたい気持ちがあるけど、どうしてもが引っ掛かる。


お姉の方を見ると、お姉も何かを考えているようであたしの方を見て様子を窺っている。



「どうしたの?

 もう予定が決まっちゃってた?

 3連休が駄目なら来週でも大丈夫だよ?」



美波ちゃんのこの前向きさは尊敬できる。鷺ノ宮さぎのみや達に弄ばれて望まない妊娠をしただろうに、その事に引き摺られずフユとの関係を修復しようとする姿勢はあたしにはないものだ。



「ううん、あたしは大丈夫。3日とも予定が開いてるからどの日でも良いよ。

 お姉はどうなの?」




◆神坂夏菜 視点◆


美波が冬樹と遊びに行く約束を取り付けてきたという。美波は美波でまだ冬樹のことを諦めていないのかも知れないが、美晴さんが譲ることはもうないだろう。


それはともかく、冬樹との関係修復は望むところではあるし、翌日からの連休は外せないほどの予定はない。


ただ、春華は冬樹の前のマンションにを引き摺っているように思うので、春華が難色を示すようなら時期尚早と言うことで見送ることも考えようと思っていたが、賛意を示してきた。



「私も大丈夫だ。できたら真ん中の土曜日が良いかな。

 まぁ、どうしてもというわけではないから、別の日でも構わないぞ」



「わかった。じゃあ、夏菜お姉ちゃんの都合が良い土曜日で聞いてみるね」



危なっかしいところもあるけど、こういった前向きさは美波の美点だと思う。


今回は良い方向へ進んでくれれば良いのだが・・・

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