第93話
◆
既に今年購入2回と売却1回でお世話になっている営業さんなのもあり気心が知れてきた感じがする。
『もしかしてまたお引っ越しですか?』
「はい、それでまたお力添えをお願いしたいなと思いまして・・・」
『ホントにまたですか!?
私としては非常にありがたいですけど、賃貸でもそんなにポンポン引っ越す人なんかなかなかいないのに分譲マンションでこの頻度はうちの営業の話でも聞いたことがないですよ』
などという雑談も交わせるくらいになってきているので、こちらとしてもありがたい。
また、俺が予約の電話をしている間に美晴さんには美波へ連絡してもらって、二之宮が
あと、最低でも転居するまでは
こちらの落ち度でもあるので俺の費用負担で転居してもらっても良いのだけど、それはさすがにやり過ぎになるだろうと自重している。
アポの時間に余裕を持って到着した俺と美晴さん・・・と、ピアノ教室が休みで暇だからとついて来たみゆきさんを見た、顔なじみになっている営業補助の女性スタッフさんが挨拶代わりに一言。
「第二夫人ですか?」
「いやいや、第二夫人ってなんなんですか?
第一僕はまだ結婚できる
「そう言えばそうでしたよね。神坂さんはあまりにも大人っぽいから年齢を忘れてしまうのですよね」
ほどなくして、担当営業さんにバトンタッチして簡単にストーカーにマンションを特定されてしまったのでできるだけ早く転居したいという話をしたら、いくつかの物件を紹介してもらった。
今回も即金ですぐに取引できるのなら割り引いてでも手放したい売り主の居る物件を紹介してもらえ、みゆきさんがついて来た因果なのかセキュリティを重視した結果、ピアノを置いて演奏しても大丈夫な防音室付きの物件が筆頭候補になり、そのまま4人で内覧へ行って、その部屋に決めて手付金を払ってきた。
しかし、一番気に入ったのがみゆきさんなのはおかしくはないだろうか?
たしかに今のマンションよりもみゆきさんが勤めるピアノ教室への通勤はしやすくなるし、部屋にピアノも置ける・・・でも、みゆきさんは一時的に居候しているだけで、落ち着いたら出ていくという話になっているわけで、そんな気に入ったところであまり意味がないような気がするのだけれど何を考えているのだろう?
◆岸元美晴 視点◆
私の注意不足で二之宮さんにマンションの特定をされてしまった。注意を払わないといけないという意識は持っていたから、面と向かって話をする時には聞かせてはいけないことを言わないようにと言う注意はしていたけど、尾行については完全にそういう事があるという危機意識を持っていなかった。
今までそういう事を意識しなくてはならない事がなかったからと言えばそれまでなのだけど、だからと言って冬樹くんや
冬樹くんは私を責めるようなことをせず、むしろ落ち込んでしまっていた私をしょうがなかったという風に慰めてくれた。本当に優しいと思う。そして、有言実行で二之宮さんの裏をかいて引っ越しをしてしまうというのだ。つい1ヶ月前に引っ越したばかりだから、すぐに引っ越すとは思わないだろうというのが冬樹くんの見立てだ。
更に、引っ越しするまでは最寄り駅とは別方向で別路線になる駅を使う様にすることと、不動産仲介業者さんに口利きしてもらってマンションの管理会社に二之宮さんが来ていたら連絡して教えてもらえるようにもしてもらった。
電車は少し距離は遠くなるし乗り換えの
新しいマンションも決まり、帰宅してきたところで
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