第88話
◆
今日は
「おはようございます。まだまだ暑いですね」
「そうだね。暑いね、早く涼しくなって欲しいよ」
「ですよね。図書館はこっちです、ついてきてください」
「それで、図書館は近いの?」
「すぐですよ。ほら、あの建物が図書館です」
「ほんとだ、すごく近いんだね」
迷うことなく二之宮さんと合流し図書館にも入り、勉強ができる場所も確保できた。
ただこのスペースは喋ってはいけない雰囲気が強く二之宮さんに質問がしたくてもできなかったので、途中詰まってしまったりもした。
病院の予約時間の1時間前になり、食事をしつつ時間を調整して予約時間の10分前に病院へ着いた。まったくの余談になるけど、二之宮さんは物知りでこの近辺のごはん屋さんだけでもいくつも候補を挙げていた。パパ活をしているということだけど、そういうことをやっているから詳しいのかな?
検査も滞りなく終わり、待ち時間も二之宮さんと話していたらあっという間に過ぎ、待ったという感じすらなかった。ごはん屋さんの候補を挙げている時も思ったけど、二之宮さんは話題が多くて知的な感じがするしそれがカッコいいと思う。
二之宮さんからは
◆二之宮
「わたしは陰性だったよ。二之宮さんはどうだった?」
「私も陰性ですね」
岸元さんは陰性だったらしい。雰囲気からして嘘をついているようには見えないし、そもそもそんな嘘をつくタイプではないのはここ数日の付き合いだけでも良くわかっているので疑う気もない。
ちなみに私は本当は陽性だったけど、わざわざそれを教えてあげる必要はないと思っている。そもそも、最近交流が増えただけで友達ではないのだから。
おそらく冬樹のことがなくても友達にはなれないほどには性格が違いすぎているし、本質的にこのどことなくノーテンキな性格は受け付けない。逆に冬樹のことがあるから付き合っているようなものだ。
しかし、ここ数日でなんとも懐かれたような気がする。
おそらく、ひとりで居られない性格なのに、冬樹や
今になって思えば、一学期に
病院で検査を終えてからはすぐに帰ることにし、岸元さんとは駅で別れた。
岸元さんからはまだ時間が早いからとファミレスやカラオケなどへ行かないかと誘われたけど、検査の陽性という現実を突き付けられてそんな気分になるはずなどない。
当然、薬の処方箋も出されているけど、いつも行っている薬局には知られたくない薬なので、ターミナル駅の駅近でドラッグストアチェーンの人が多い薬局で手帳も忘れたことにして購入した。
◆
学校から帰宅しお隣の様子を伺ったら美波ちゃんがいたのでお隣へ行って美波ちゃんに声を掛けた。
「昨日ね、フユとビデオチャットで話したんだけど・・・」
「春華ちゃんは良いよね!何の心配もなく、冬樹とも話ができて!」
「ど、どうしたの美波ちゃん!?」
「どうしたも何もないよ。冬樹と話をしたって自慢話でもするつもりだったの?」
「そんなつもりなんかないよ・・・」
「じゃあ、なに?」
「今度、美波ちゃんとも話をしようってフユが・・・」
「そうなんだ!いつ?」
「それはこれからすり合わせてだけど、美波ちゃんは都合悪い日はある?」
「そんなのないよ。いつでも大丈夫って言っておいて」
「うん・・・」
この短いやり取りでも美波ちゃんの身勝手さが露出している。話の導入でいきなり自慢話なのかと腰を折られたらそれ以上話したくもなくなってくる。
よく考えたら、前から美波ちゃんにはそういうところがあって、でもその負の部分があたしへ向いていなかったから気にしていなかっただけなんだよね。
今は美波ちゃんの悪いところが目立ってしまってて気分が滅入るなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます