第87話
◆
姉さんの怪我の様子や、ハルが始業式以来となる登校をしたことが気になっていたのもあり、
姉さんの怪我はもうだいぶ良くなってた様で包帯もしなくなって目立たなくなったし、ハルは学校へ行って無事に一日過ごせたとのことだった。
ハルも姉さんも結局は他人の責任転嫁の雰囲気に呑まれていただけで、そんな中で姉さんが救急車で運ばれる目立ち方をした影響で冷静にさせられた様な感じだ。
「状況は悪くなさそうなのに、ハルの表情に陰りを感じるけど他になにか問題があるのか?」
『うーん、
美波ちゃんからの声掛けで一緒に勉強するようになったし、明日は一緒に病院へ検査に行くんだって』
『私からも注意したんだが、聞いてなかったのか忘れたのかたった2日でこんなに近付くとは呆れてしまったよ』
「美波はさ、きっと誰かに一緒にいて欲しいと依存するタイプなんだよ。
ずっと俺やハルが側にいたからそれに気付く機会がなかったけど、俺がこんな事になってハルや姉さんとも距離が離れてしまっていたし、表向きの境遇が似ている二之宮に依存してしまっているんじゃないかな?」
『たしかにそれはあり得るな。依存してしまうから、危険だと言ったところで聞き流して感情のままに二之宮
『それってダメじゃん!
いくらなんでも身勝手な独占欲でフユを陥れた女に近付くとか、さすがに許せないよ』
「美波と一番近い
一度家へ帰ってちゃんと話し合わないとダメみたいね」
「しかし、姉さんやハルが言っても聞かないのに、美晴さんがちょっと顔を出して何か言っても効果がないんじゃないですか?」
「そうなのよね。どうしたものかしら?」
「一度、美波ともビデオチャットしてみませんか?
美晴さんが一緒に居てくれたら俺は大丈夫だと思いますし」
「冬樹くんが大丈夫ならそうしてもらえるとありがたいかな」
「美晴さんがいてくれるなら大丈夫な気がしてますから、とりあえず駄目になるまではやってみて良いと思います」
『たしかに、冬樹が相手をしてくれるのが一番良い様に思うな・・・
それについてなんだが、謝らないといけないことがある』
「姉さん、何を唐突に?」
『先週、こうやってビデオチャットで話をした時にだな、美波に請われて断りきれず、やり取りを見せていたんだ。
なので、冬樹と美晴さんが付き合うことになったことを美波は聞いている』
「そういうことでしたか。
たしかに、黙って覗かせていたのは良くないですけど、美波のことだから相当無理を言ったんでしょう?
しょうがないですよ」
『冬樹の言う通りなんだが、そう言ってもらえると助かる』
『ほんと、あの時の美波ちゃんは何を仕出かすかわからない勢いがあったもんねぇ』
「美波ったら・・・本当にしょうがない
正直なところ俺は美波はどうでも良いのだけど、美晴さんやハルが気にするからケアをしないわけにはいかないと言うことで、美波とビデオチャットをする方向で話をまとめ、段取りは姉さんとハルに任せるところまで決めてから、今日のビデオチャットは終了した。
その様子をリビングでなんの気なしに見ていたみゆきさんは「美晴ちゃんの妹ちゃんって、困ったちゃんなの?」と聞いてきて、美晴さんは苦笑いしながら「ええ、まぁ」なんて返していた。
今になって思うと本当に困ったやつだ・・・ほんのちょっと前まで好きだった自分が信じられないくらいダメだと思う・・・
夜が更けてそれぞれが部屋に戻っていく流れになり、自室へ戻ると学校に設置したカメラの映像をチェックした。
たしかに、姉さんもハルも周囲の雰囲気がずいぶん良くなっているようで安心した。
・・・そして、学校へ行きたいという気持ちがちょっと顔を見せてきた。
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