第70話
◆
先日、
違和感があった
鷺ノ宮が言うには二之宮さんは俺に対して恋愛感情を持っていて自分の物にしたいがために孤立させる様にしたのだとか・・・また二之宮さんは貞淑そうな見た目に寄らず性に対してはルーズでパパ活をしていただけではなく、俺を孤立させるため鷺ノ宮たちを手駒にするために自分の身体を抱かせていたという。そして、利用されている内に倫理観がおかしくなった鷺ノ宮たちが暴走し
普段なら悪いことをしない人間でも成功体験や集団心理が働き出来心で罪を犯すと言うのは心理学でも言われていることだし、そういう意味では二之宮さんに目を付けられたのは運が悪かったとも思える。
俺もそんな他人を踏み台にしてまで事を成し遂げ様とする人に、好意を持たれたのは運が悪かったけど、鷺ノ宮たちに比べたらマシにも思えてしまう。
そんな二之宮さんとはもう会わないようにしたいけど・・・何を考えているのかがわからなくて怖いのでブロックするのも躊躇われるんだよなぁ・・・
それと関係があるのかはわからないけど、美晴姉さんは何かを悩んでいる様でそれも気掛かりだ。
8月の終わり、客人を迎えていた。
「冬樹くん、ごめんなさいね。急にこんな事をお願いして」
「いえ、先生は何も悪くないですし、この家には空部屋がありますから大丈夫ですよ」
「さすが冬樹ね。もう一生養ってもらいたいわ」
「みゆき!何をバカなこと言っているのよ!」
「みゆきさんをお泊めするのは構いませんけど、どういった事情があったのですか?」
事情はみゆきさんが職場の音楽教室で同性愛者であるということが知れ渡り、何人かの生徒の保護者からみゆきさんを辞めさせないなら教室を辞めるというクレームを受けてしまい、教室側から辞める様に促されてしまった上に、その原因のアウティングしたのはみゆきさんが一番懇意にしていたと思ってただひとりカミングアウトしてた同僚で、その人に確認したらしたと認めて開き直ったというのだ。
更にみゆきさんの性的指向をその騒動で知ったご両親もみゆきさんの人格否定をしてきて口論となり家を飛び出してきてしまったとのことで、
ちなみに、高梨先生は自分の家に泊めると言ったのだけれど、先生の旦那さんに気を使うからうちの方が良いと言うあたりは気を許してくれている感じで悪い気がしない。美晴姉さんもみゆきさんが滞在することには反対ではないとのことで、それならばと泊まってもらうことにした。
「それにしても、引っ越すとは
そんなに百合恵の近くが良かったの?」
「それは完全に偶然です。前のところは学校から近過ぎたので急いで遠ざかろうと不動産屋に依頼したら掘り出し物でこの部屋を紹介されたんですよ」
「でも、ほんと良かったわ。ここならすぐに百合恵のところへ行けるもの」
「それなら、やっぱり先生の家へ行きます?」
「それはいや」
冗談も程々に今後のことを尋ねたら、ご両親からはどうしても許せないことを言われたので家には帰りたくないし、これから新しい職場探しをするので、それが落ち着くまで置いて欲しいと言うことだった。
家賃を払うとは言ってくれたけど、困った時はお互い様ということで俺が何か困った時には助けてもらうということで納得してもらった。
みゆきさんとは二度目の邂逅だというのに、両親から心無いことを言われたからなのか、懇意にしていた同僚に裏切られたからなのか、言動の端々から寂しさを感じられたことに自分を重ね手助けしたいと思ったのもあると思う。
「それじゃ冬樹君、岸元さん。申し訳ないけどみゆきのことお願いしますね」
先生が帰宅され、俺と美晴姉さんとみゆきさんだけになった。
◆
「みゆきさんは、この部屋を使ってください。足りない物があったら言ってくださいね」
「ありがと。でも、大丈夫そうよ」
常識で考えたらメチャクチャなことだけど、仕事を辞めさせられ、親とケンカした流れで駆け込んだ先が、先月1度会っただけの男子高校生の家なのは私にとっては不思議と自然な感覚だった。
初対面の時は百合恵に纏わり付く良からぬ男子高校生ではないかという先入観もあって良い印象ではなかったけど、言葉を交わすと不思議と落ち着いたし、百合恵を気遣う態度もあってすぐに好意を持てた。
私のことだけでなく百合恵のことを口汚く罵った両親への怒りで家を飛び出して、どうしようかと思った際に真っ先に浮かんだのは冬樹だった。冤罪で立場をなくし、家族との関係も悪化したのに周囲を気遣う雰囲気はとても印象的で、そして迷子の様な自分をわかってくれるような気がした。
ここに来て話を聞くと、双子の妹さんと二人きりで過ごしたら嘔吐するほどの拒否反応を示してしまい、様子見のために家族と距離を置くようにしたという話だけど、恨み言の一つも言わず申し訳無さそうな態度なのは魅力的に思える。
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