第69話
◆
思ったよりも早く
【ダーリンには愛想が尽きた。別れて。もう二度と会おうとしないで】
ただ、あまりにも内容が理解できない。
これは何かトラブルに巻き込まれて怪しまれないためのメッセージを送ってきたのかもしれない。
とりあえず、先生に相談してみようと思う。
◆
二之宮さんから心配をしないで欲しいというメッセージがあり、少し安心したところで冬樹君から電話がかかってきた。
「はい、高梨です」
『こんばんは、神坂です。少しお話しいいですか?』
「はい、大丈夫ですよ」
『さっき二之宮さんからメッセージが届いたのですけど、文面が脈絡もなく僕に別れ話を切り出す内容でおかしかったのです』
「冬樹くんは二之宮さんとお付き合いしているわけではないですよね?」
『もちろんです。第一、そんな関係になる状況じゃなかったじゃないですか』
「そうよね。でも何でそんなメッセージを送ってきたのかしら?」
『何かトラブルに巻き込まれていて、それを知らせるためではないかなと思ったのです』
「たしかに、冬樹君なら頼りになるしそういうメッセージを送ったのかもしれないわね。
あと、わたしの方にもメッセージが届いて、心配しないで欲しいという内容だったわ」
『ますますおかしいですね。やはり何かトラブルを疑った方が良いかもしれないですね』
冬樹君と少し状況を整理する話をして電話を切り、
『はい、塚田です』
「高梨です。お電話大丈夫でしょうか?」
『もちろん大丈夫です。どんな御用でしょうか?』
「先程、二之宮さんからメッセージが届きまして、また部活で接点があった神坂君には不審な内容でメッセージがあったそうです」
『はぁ、そうでしたか。ところで、何で高梨先生が神坂君とやり取りをなさっていたのですか?』
「部活の顧問を引き受けた縁があったのもあり、たまたま会ったので何かわかったら連絡をもらうようにお願いしていたんですよ」
『そうでしたか。わかりました。二之宮さんのお母様へ連絡します。わざわざ電話をありがとうございました』
その4日後に二之宮さんは無事・・・と言って良いかは判断が分かれるところだけれども、大きな怪我をしている様子もなく見付かった。
お母様が携帯電話会社へ何回か位置特定の問い合わせをし毎回同じ住宅街に居続けて移動した様子がなく、探偵に依頼して特定された場所の周辺を調査し、宿泊など滞在できそうな場所がなかったことと、冬樹君へのメッセージが不自然であったことを以って警察に掛け合い、事件性があるだろうということで捜査してもらえ独身中年男性の家に監禁されていたところを保護された。
この犯人とはパパ活で交流があった関係だったとのことで衝撃的だった。犯人は流出してしまっていた鷺ノ宮君達との行為の動画を見て自分が二之宮さんを救いたいと供述しているとのことなのだけど、わたしには理解できない話で同僚の先生方も同じ様に困惑していた。
保護されたと言っても二之宮さんは暴行を繰り返されていたため衰弱しきっていて病院に入院し、また精神的にも不安定になってしまっていてメンタルケアが必要な状況とのことだった。
最悪の状況にはならなかったものの痛ましい現実にわたしは精神的に耐え難かった。
◆
二之宮さんが監禁されていた事件で保護され、犯人も逮捕されてから数日経った。
その間にも次々と隠されていた事実が明るみに出てきていて驚きの連続だった。
更に表沙汰になっていない事もあるみたいで、その一部は部活の顧問として関わっていた高梨先生は知らされていた様だけれど、守秘義務ということで私達には教えてくれなかった。
でも、そんな少ない手掛かりから冬樹くんは一つの仮説を立てた。
その仮説にもとづいて証言を得るために夏菜ちゃんを伴って
「はじめまして、私は岸元
今日は聞きたいことがあって面会をさせてもらいました。よろしくお願いします」
「私のことは知っているだろうが、神坂冬樹の姉で秀優高校では生徒会長をしている神坂夏菜だ。
今日は美晴さんの付き添いでついて来ただけなので気にしないでくれ」
「鷺ノ宮隆史です。お姉さん方にはなんと言って良いのかわかりませんが、聞かれたことについては、お話させてもらいます」
「あまり時間もないので単刀直入に聞きますね。冬樹くんが二之宮さんを襲ったと言って捕まえたのは二之宮さんから頼まれてしたことですね?」
「え?どうして、そう思ったんですか?」
「簡単に状況を説明すると、二之宮さんが監禁され暴行されるという事件がありました。
そして、その犯人はパパ活をしていた相手の人でした。また、その人以外にもけっこうな人を相手にしていたようです。
性的な行為に心理的ハードルが低く、そういった行為の動画が流出したのにも関わらず動じていた感じがなかったのです。
なので、二之宮さんは何か目的があって鷺ノ宮くんと共謀して冬樹くんを陥れたのではないかと推測したのです。どうですか?」
「たしかにその通りです。あの女は神坂を好きで自分のものにしたがったんですよ。
神坂を陥れて孤立させ自分だけが味方と言う状況を作り、自分の方を向けさせようとしてました。
俺は美波さんを好きだったので神坂との間に溝を作れるのならと、あの女の誘惑に乗ってしまったんです。
そうしたらあの女は身体で誘惑して佐藤と鈴木を自分の手駒にし、ふたりに協力させ俺があの女を襲ったという状況を作られてしまい言う事を聞いていたんです。
それから目的がわからないけど、
佐藤と鈴木以外にも部活の仲間や先輩たちもそれに加わるようになって・・・理性が壊れた先輩たちは暴走をはじめて、俺に告白してくれた
「そういうことだったのですね。話を聞かせてくれてありがとう。
でも、なんで今まで本当のことを言わなかったのですか?」
「俺に不利な証拠を作られていたから、本当のことを言っても言い逃れをしようとしているようにしか見えないと思ったんですよ。
それなら作られた状況を黙って受け入れる方がマシだろうと思って言わなかったんです」
「・・・たしかにそうなりそうではありましたね」
鷺ノ宮くんとの面会を終え、帰り道の途中で夏菜ちゃんが言った。
「私達はくだらない思惑に翻弄されていたんですね」
「そうね、巻き込まれた夏菜ちゃん達には溜まったものじゃないわよね」
「でも、私は自分が一番許せないです。冬樹を疑ってしまった自分がっ!
それで冬樹を追い込んでしまった自分が憎くてしかたありません」
「夏菜ちゃん、思い詰めたらダメよ。人間、常に正しい選択なんかし続けられないのだから。
それよりも、これからどうしていくかじゃないかしら?
私だって協力するから、ね?」
「ありがとうございます・・・
結果的に美波と仲村さんが一番の被害者でしたね。子供を堕ろす事になってしまって」
「え!?
美波、子供を堕ろしたの!?」
「美晴さん、知らなかったんですか!?」
◆二之宮
冬樹・・・会いたい・・・
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