第67話

二之宮凪沙にのみやなぎさ 視点◆


冬樹ふゆき春華はるかさんを家に泊めた事により拒否反応を示して嘔吐した一件から冬樹の家族のほか岸元きしもとさんや私も冬樹とは会わないようにする事となってしまい、それに逆らって会いに行っても余計に立場が悪くなるだけなのが見えているため、時間があるときは情報収集のために学校へ来るようにしていた。


フットサル部では仲村なかむら先輩が大会の直前に出場できなくなったと騒ぎになっていたので仲村先輩の様子を追っていたら、責任感からか運動はしないものの基本的には部活に出て手伝いはしていたけれど、表情は冴えず動きも緩慢だった。


仲村先輩は部活をあらかじめ休むと言って休んだ日があったので、その日は学校へは行かず仲村先輩の行動を観察していたら、母親と思われる人に付き添われて産婦人科へ入っていった。それほど待たずして出てきたので、1週くらい前に中絶していて術後の検診だったのだろうと思った。



仲村先輩についてはそこで状況がだいたい掴めたので次は高梨たかなし先生を追ってみたが、特に変わった様子もなく肩透かしだった。




そんな風に学校へ来るものの冬樹にも会えず、冬樹に関する情報も対して得られないまま8月も後半になってしまっていた。




今日も登校し特に収穫もなく学校を出て駅へ向かっている途中で、いきなり肩を掴まれ呼び止められた。



亜梨沙ありさちゃん!

 心配したんだよ!

 これからはボクが守るから安心してね!」



そんなことを言われた直後に強い衝撃を受け意識を失った。




意識を取り戻すと薄暗くジメジメした部屋のベッドに寝ていて、右足首に違和感を覚え確認すると鎖で繋がれていた。



「亜梨沙ちゃん、目が覚めたんだね?」



学校の正門で掛けてきたのと同じ声。姿を見るとお金をもらって相手をしていたオジサンのひとりで、呼び掛けられる名前はお小遣い稼ぎをする時にオジサンに名乗っている偽名だ。



「エロサイトで亜梨沙ちゃんが大勢の男に囲まれている動画を見つけた時は驚いたよ。

 いつも会う時と違う高校の制服だったし、本当は秀優しゅうゆう高校の生徒だったんだね。

 あんなひどい男子生徒がたくさんいる学校へなんか行かなくて良い様にボクが亜梨沙ちゃんを・・・いや本当は二之宮凪沙にのみやなぎさって言うんだね・・・凪沙ちゃんを守るから安心してね。

 凪沙ちゃんはここに居れば安全だから。ボクだけを見てくれていれば幸せにするから。安心してね」



「い、いや、た、助けて・・・」



何も安心できない。私のカバンから生徒手帳を取り出して私の名前を知ったらしい。心の底から助けてほしい気持ちしかないし、冬樹がこの場に助けに来てくれないかと願った。



「大丈夫、ボクが助けてあげるからね」



このオジサンは1年くらい前から月に2~3回位の頻度で会っていた人で、2年に進級してすぐの頃に『付き合って欲しい』と告白をされ、それを断り連絡もブロックしていた。



「クソガキ共のせいでボクと会えなくなってしまっていたんだね。

 それにしても、凪沙ちゃんは人が悪いよね。

 ボクと会う時は笛籐ふえふじ学園の制服か私服だったし、いくら笛籐学園に行っても凪沙ちゃんに会えないわけだよね」



笛藤学園というのは都内でも秀優高校からはけっこう離れた地域にある高校で、偏差値が低く中退する生徒が多いからか古着の制服がフリマで安く買えたのでオジサンと会う時はその制服を着ていた。



「でも、先週エロサイトで凪沙ちゃんが男子生徒にされている動画を見て、アイツラのせいで凪沙ちゃんは自由になれず、他人になりすまして助けてくれる人を探していたんだって気付いたんだよ。

 ボクからお金を欲しがったのもアイツラに貢がないと殴られるからだったんだろ?

 大丈夫、ボクはわかっているから何も言わないで」



「あ、あの、この足の鎖を、はずして、もらえませんか?」



「ごめんね、凪沙ちゃん。

 凪沙ちゃんは責任感が強いだから、自由に動けるとあのクソガキ共のところへ行こうとするだろ?

 それはさせられないから、それだけは我慢して。

 でも、凪沙ちゃんが欲しいものは何でも用意するし、できるかぎり自由にさせてあげるからね」



「それじゃ、スマホを・・・」



「それも我慢して。凪沙ちゃんはあのクソガキ共と連絡を取るつもりなんでしょ?

 ダメだよ。凪沙ちゃんは自由にならないと。

 そのためには連絡できる手段も断たないといけないんだ」



「トイレに行かせて・・・」



「この部屋から出してあげられないから、このスツールのフタを取って、この中にして。

 大丈夫、あとの始末はちゃんとボクがするから」



「なんなのこれ・・・」



「これは防災用の簡易トイレだよ。だから変なものじゃないから大丈夫。排泄物はセットしてある袋に入るから繰り返し使えるし心配しないでね。

 トイレをしたいんだったよね。ボクのことは気にしないでいいから、はいどうぞ」



「さすがに男の人が見てる前でするのは・・・」



「ボクは凪沙ちゃんの守護者だから、男だと思わないでいいよ」



「いや、そう言われても・・・」



そういった瞬間、オジサンの目が急に輝き出した。



「そうだよね。ごめんね乙女心を察せなくて。

 凪沙ちゃんはボクのことが好きだから、男としてしか見られないんだね」



「いや、ちがっ」



「うん、ちょっと向こうを見ているから。これで気にしないでできるね」



「えっと、話している内にしたくなくなったので大丈夫です」



「そう。したくなったらいつでもしていいからね」



そうしたらオジサンが服を脱ぎ始めた。



「なにをしてるの?」



「ああ、凪沙ちゃんがクソガキ共に汚されたからボクが浄化するんだよ」



「え・・・どうやって」



「ボクから生成される神聖な液体を凪沙ちゃんのに注入するんだ。

 それを浄化しきれるまで繰り返すんだよ」

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