第63話
◆
「この機種はファイル移動が簡単で・・・
・・・これで保存完了です」
「何から何までありがとう。
ところで話が変わるのだけど、さっき電話で言っていた学校を辞めるっていう話は決定したことなの?」
「はい、美晴姉さんがそうした方が良いと言ってくれて、実際大学進学だけなら高卒認定試験を受ければ良いですから。
このあと
「そうなのね。冬樹君が居なくなっちゃうと寂しくなるわね」
「そこは僕も気掛かりなので・・・学校を辞めても先生に連絡して良いですか?」
「ええ、もちろん。いつでもなんでも言ってちょうだい」
部活のことはとりあえず夏菜姉さんと相談してどうするか決めてもらう事の他、先生の家庭事情は当面は問題なく過ごせそうとのことだった。
美晴姉さんと先生に準備室待っていてもらい塚田教諭のところへ退学の話を行った。
「精神的に不安定だと診断されたこともあり、退学したいということですか。
しかも転校せず高卒認定試験を受けて大学受験に臨むのですね。
たしかに一学期の間は神坂君にとって本人以外には想像し難い厳しい状況だったことはわかるので引き止めづらいですね。
この件は僕から上に報告してどうすれば良いかなど確認してから連絡します」
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」
「いや、いいんだよ。僕こそ力になれなくて申し訳なかった。
それと、もう不要かもしれないけど今学期の通知表をここで渡させてもらうね。
逆境の中だというのに大変優秀な成績でした。これからの活躍も期待しています」
◆
「冬樹君のことで岸元さんに相談したかったことがあるのだけど良いかしら?」
「もちろん大丈夫です。それで、どんなことでしょうか?」
「冬樹君ね、最近わたしに対しての好意の表現が過ぎる時があるの。
これも心の問題じゃないかと気になってしまったの」
「先生がそう思われたのでしたら、病院の
次に病院へ行った時にはその話も聞いてみたいと思います。先生にもまた電話でお時間をいただいて良いですか?」
「それはもちろん協力させてもらうわ。日程が決まったら知らせてちょうだい」
「はい、その時はよろしくお願いします」
冤罪事件以降もっとも親身に接してくれていたみたいだし、冬樹くんの中で刷り込みがあったのかもしれないのだけど、
旦那さんとの事は改善したみたいだけど再び悪化するかもわからないし、冬樹くんの中での存在感がとてつもなく大きくなって、互いが支え合って強力な絆を育むことになってしまうかもしれないという怖さがある。
先生は良識のある人ではあるけど冬樹くんが学校を辞めたら教師と生徒という立場ではなくなるし、強力な恋のライバルになるかもしれない・・・でも、冬樹くんのために力になってくれる人としても頼れる人だし気持ちは複雑になるな。
◆塚田
高梨先生は旦那さんとの関係を修復したらしい。
それはそれとして、神坂君の住むマンションに入っていったことは偶然で、神坂くんとは関係なかったのだろうか?
その神坂君も精神疾患で悪影響が出ないように退学したいと申し出てきたし、関係がなさそうででもタイミングは一致している妙な違和感がある。
高梨先生のことも今後まだチャンスが来るかもしれないからできることなら芽を残したいし、そうなると神坂君との縁も繋いでおきたい・・・
神坂君は転校はせず高卒認定試験を受けるということだから、休学扱いにしていつでも復学できるようにできれば良いのではないだろうか?
そもそも今回の件は全面的に学校側の落ち度なわけだし、神坂君が高卒の資格を取りさえすればたまにしか学校へ来なくても見做しで卒業させることくらいはできる様に思う。
教頭へ報告する際にはそれも合わせて提案して繋がりを残せるようにしよう。
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