第48話
◆
フユが実際に行われたことを見ていたと知った
「美波ちゃん、待ってー」
「ぜぇ、ぜぇ、美波ちゃーん、待ってよー」
運動神経は美波ちゃんの方が良いのもあってだんだん離されていき、このままだと見失ってしまうかもと思って不安になったけど美波ちゃんが急に走るのをやめて歩き出したので追い付くことができ、逃げられないようという思いから後ろから抱きついて話しかけた。
「美波ちゃん、落ち着いて。そして、落ち着いたらあたしとふたりで話をしよ」
「う゛ん゛、わ゛がっだ」
美波ちゃんは、顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
「ほらほら、顔がひどいことになっているよ。顔を洗おっか」
「うん」
そのまま化粧室の洗面台へ連れていき、美波ちゃんには顔を洗ってもらってから、あたしのクラスの教室へ移動し、放課後で時間も経っていたのもあり誰もいなかったのでここで話をすることにした。
「フユに見られていたって知ったのがショックだったの?」
「うん。知られていても話だけだと思っていたから、見られていたと思ったら思わず逃げ出したくなっちゃった」
「そうだよね。美波ちゃん、フユのことずっと好きだったもんね」
「やっぱりバレてた?
ずっと
「さすがにね。態度が露骨だったしわかってなかったのはフユくらいじゃないかな。
そのフユだって逆に美波ちゃんのことを意識していたのは間違いないし、今だから言えるけど両片想いにしか見えてなかったよ。
だから思うんだけど、なんで
たしかにフユ以上に人気があるイケメンだけどさ」
あたしが思う一番の疑問。いくらフユの事が信じられなかったからって、2ヶ月も経たずに付き合うなんて尻軽じゃないかしら?
「冬樹と
冬樹のことを極力避けたくてふたりのことも避けてしまっていたの」
「やっぱりかぁ。避けられているのは感じてた。
フユとの距離を取るためにあたし達とも距離を取っていたのね。
あたしもあたしで、自分の早とちりで余計なことを言ってフユが家を出てってしまってお姉が怖かったしパパママが仕事入れて帰ってこなかったりでいっぱいいっぱいだったから、美波ちゃんのことを後回しにしてた」
「それは、お互いしかたがなかったんだよ。それで、クラスメイトとは話をしていたけど、2年になってからは冬樹と一緒にいることが多かったからどことなく孤立した感じになってしまってて、そんなとき鷺ノ宮くんとよく話すようになっていたんだ。
特にひとりで勉強するのが不安だったから鷺ノ宮くんと一緒にやっていて、近くで話していたらカッコいいなって思う様になってしまっていたの」
「それで付き合ったの?」
「告白された時はさり気なくどこか影があってカッコよさが割り増しで見えたから、お試しということで付き合うことにしたんだけど、付き合い始めてからしばらくすると急にね、強引に求められるようになってね、それでも、彼はカッコいいし、興味があったから受け入れちゃったんだ」
「美波ちゃんさぁ、それにしても早くない?
美波ちゃんの人生だからいつ誰と付き合おうと何をしようと美波ちゃんが決めれば良いことだけど、長いことフユのことが好きだったと言う割には鷺ノ宮に乗り換えるまでがさ」
「だって、心細かったし・・・」
「それはわからないでもないけど、美波ちゃんはまだフユと付き合いたいと思っているの?」
「できたら付き合いたいとは思う。また話ができる様になったし、可能性はあると思うけど・・・」
「う~ん。美波ちゃん
あのあと前の様に呼んでくれたけど、その直後にうちで倒れて病院へ運ばれて、検査の結果が精神的な負担だったんだよ」
「それはそうだけど、今日だって話はしていたじゃない」
「たしかにそうなんだけど、うちの家族だけじゃなくて美波ちゃんもフユの負担になっていると思うから必要以上に近付いて欲しくなっていうのが率直な気持ち。
もちろんあたしだってしばらくはフユに必要以上に近付かないつもりだし」
「それは春華ちゃんの言う通りかもしれないけど、春華ちゃんは
「あたしやお姉がいるから全く無関係になるってことはないと思うけど?」
「春華ちゃんと関係があっても冬樹とは関わりが無くなりそうな気がしてならないよ」
「たしかに今までみたいには無理だろうね。
どちらにしてももうすぐ夏休みだし、うちの家族の誰もフユの家がどこにあるのか知らないから嫌でも離れるしかないよね。
知っているのは美晴お姉だけだけど、美晴お姉はフユの事を考えてあたし達には教えてくれないよ」
「そうよね。お姉ちゃんは教えてくれないよね。
冬樹のこと好きみたいだし、わたしが
前々からあたしもそうかもしれないとは思っていたけど、美波ちゃんから見ても美晴お姉はフユのこと好きに見えるんだ。美波ちゃんが言うくらいだから恐らく本気なんだろう。本気なんだったら美晴お姉を応援したいかな。やっぱり、鷺ノ宮に
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