第31話
◆
昨日、
もう何もする気が起きない・・・わたしの初めては
冬樹が言っていたけど、あの時に動画を撮られていたからネットに流される可能性もあるし、もし学校の裏サイトに流れて全校生徒に知られることになったら学校にも行けなくなるかもしれない。
今は実感がないから何とも言えないけど、それでも好奇の目で見られるのは想像するだけでも怖い。冬樹ならなんとかしてくれると思えるけど、それにだって限界がある。もう既に流されていたら取り返しがつかないし、嫌な想像が思考を汚染する。
昼頃お姉ちゃんが帰ってきたと思ったら、お母さんと少し話をし、電話を掛けて10秒ほど話したらお母さんに替わり、お母さんが電話口に挨拶をしたかと思ったらすぐに通話を終えていた。
その電話が終わったらお姉ちゃんは荷物を抱えて駆け出すように家を出ていった。
気になったのでお母さんに聞いたら、冬樹が退院したけど、お姉ちゃんが精神的に不安定な冬樹を1人にさせたくなくて、しばらくのあいだ冬樹の面倒を見るために冬樹と同居したいと言って、お母さんはそれに許可を出し、さっきの電話は冬樹に挨拶だったとのことだった。
わたしは冬樹が今どこに住んでいるのかも知らないのに、お姉ちゃんは一緒に暮らすというのだ・・・今になると察せられる。お姉ちゃんは冬樹のことが異性として好きだったのかもしれない。わたしがずっと隣に居たから遠慮をしていたのかもしれない・・・
お姉ちゃんが冬樹の家で暮らすという話について考え込んでいたら、お母さんはまたどこかへ電話をして話をしていた。
なんとなく聞いていると今お姉ちゃんが住んでいるアパートの解約の手続きのようだ。電話が終わったお母さんに聞いたら、お姉ちゃんは冬樹の家に住み続けるつもりで、もし住み続けられなくなったとしてもこの家に帰ってくるつもりとのことで、それならばと解約するのだという。
今はっきり理解できた。お姉ちゃんは冬樹のことが本当に好きで、その隣にわたしが居るのを見ているのが辛かったから勉学に集中したいという表立っての理由を作って一人暮らしをしたんだ。逆の立場になってわかる。お姉ちゃんは好きだけど、冬樹の隣にはわたしが居たい・・・ひとつしか無い冬樹の隣という場所・・・生まれて初めてお姉ちゃんの存在が恐ろしく感じている。
わたしがあの時ちゃんと冬樹の言葉を聞こうとしていれば、冬樹を信じていればと思わずにはいられない。
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