第19話
◆
目が覚めたら、違和感だらけだった。
寝慣れないベッドの感覚に空気感。そして、久し振りに見た母さんの顔は家を出る前でも見たことがないほど精彩を欠く、まるでこの世の終わりを告げられたかの様な表情だった。
「冬樹、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
「母さん、どうしたんですか?俺はどうしたんですか?」
「あなたはね、家に帰ってきてすぐに苦しみながら意識を失ってこの病院へ運ばれたの。
そして、冬樹が意識を失っている間に検査をしてもらったら、どこにも異常がなかったの」
「異常がないのに、意識を失ったのですか?」
「そう、精神的な負担に耐えかねてのことではないかと、
「そうですか・・・それで母さんと
「そう、お父さんや
みんなにも冬樹が目を覚ましたことを教えてあげたいから、わたしは伝えにいってくるわね。
美晴ちゃん、悪いけどここはお願いできる?」
「はい、任せてください、
そう言うと、母さんは出ていって美晴姉さんとふたりきりになった。
「美晴姉さん、ご心配、ご迷惑をかけて申し訳ないです」
「良いのよ。私は冬樹くんのこと大好きだからいつでも助けてあげたいし、いくらでも迷惑をかけて欲しいと思っているよ」
「やはり、俺は自分でも気付かない内に家族と一緒に居たくないと思っているのですよね・・・」
「そういうことだと思うわ」
「そっか・・・16歳にして天涯孤独ですね」
「そんなことない!」
「え!?」
「絶対にそんな事ない!
私は冬樹くんのこと本当に大好きだし、絶対ひとりになんかしない!」
「そうですよね。美晴姉さんは俺のことを見捨てたりなんかしないですよね」
「そうよ!それは絶対の絶対に変わらない真理よ!」
まっすぐに見つめて言葉をぶつけてくれる美晴姉さんに助けられる気持ちだ。
そして、ちょうどそのタイミングで母さんが戻ってきた。
「夏菜達もここへ来たがったのだけど、冬樹に負担をかけたくないからお父さんと先に帰らせたわ。
今日は遅いから一泊してもらって、明日もう一度検査をして問題がないようなら退院して良いという事だから・・・わたしは病院の手続きしてからそのまま帰って、明日また来るわね。
美晴ちゃんはどうする?」
「私も冬樹くんの負担になりたくないから今日はこれで帰ります」
俺の方を向き直してから「冬樹くん、明日もまた来るね」と声を掛けてくれて、母さんと一緒に病室を出ていった。
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