第4話

岸元美波きしもとみなみ 視点◆


梅雨入りし期末テストの気配が色濃くなり始めた頃に、鷺ノ宮さぎのみやから告白されて、お試しでという条件で付き合うことにした。


お試しでと言ってたのにのも関わらず付き合いはじめたら強引に迫ってくるようになり、強い押しに流されるように付き合い始めてすぐに初体験を迎えることになった。


早いと思ったけど、周囲では既に初体験を済ませているもいるし、興味がなかったわけではなかったから悪くないと思った・・・その時は。



初体験をした翌日、学校はちょうど期末テスト初日で放課後になると学校から生徒がほとんどいなくなる中で、鷺ノ宮に校舎の隅の方にある空き教室へ呼び出された。


この空き教室でセックスをしたいと言われたので『学校では嫌』と断ったもののスマホに初体験の時の動画を映しながら、言うことを聞かないならこれを学校の裏サイトや動画サイトへバラ撒くと脅され、しかたなくその空き教室で鷺ノ宮の求めに応じた。


その時点で気持ちが萎えていて動画をバラ撒かれても良いから別れようかと思いながら相手をし、鷺ノ宮が果てたところでサヨナラを言ってこの場を去ろうと移動しかけたら腕を掴まれ、逆の手でスマホを操作しながら誰かとメッセージアプリで連絡を取っていた。


腕を掴まれたまま少しするとニヤついた顔の男達・・・同じクラスの男子など見たことがある顔もあれば、見たことがない人もいた・・・が何人も空き教室へ入ってきて、鷺ノ宮はその男達へわたしを突き出した。死ぬほど嫌だったけど足が竦み逃げられない内に男たちに囲まれ次々に凌辱されて意識が朦朧としている間に身体が汚されていった。


どれほど時間が経ったのかわからなかったけど、全てが終わり鷺ノ宮から口外しないように脅されてからひとりになった時はまだ外は明るかった。汚された部分をできるだけ拭い、誰にも見られないように帰宅して両親にも会わないように気を付けながらすぐにシャワーを浴びた。


その日は両親に気取られないように夕食だけ済ませたらすぐに部屋に引き籠もった。ひとりになり落ち着くと、凌辱されていた時のことを思い返してしまい心細くなり、一人暮らしをしているお姉ちゃんに【たすけて】とメッセージを送ってしまったが、その日は未読のままでわたしは眠りについた。



翌朝になってお姉ちゃんから返信があった。



【どうしたの?そっちへ帰ろうか?】



と気遣って帰ってきてくれると言うものだったが、迷惑を掛けると思い直し



【ありがとう。夏休みに時間ができたら帰ってきて。その時に相談させて欲しい】



と返してから登校した。


本当は学校へ行きたくはなかったけど、期末テストを休むわけにはいかないので渋々出席し、精神状態を映すようにテストもボロボロで、後日出た結果もボロボロだった。


鷺ノ宮とわたしを凌辱した男子たちが怖く、最後の科目が終わると帰りのSHRを待たずに職員室へ行き担任の塚田つかだ先生へ許可をもらってすぐに下校した。



下校途中にスマホにメッセージの着信があった。鷺ノ宮からの命令だったらと思うと怖かったが、春華はるかちゃんから一緒に下校しようというもので心の底からホッとした。



体調が悪いので先に帰宅していると返信し、春華ちゃんからはそれを了解した旨のスタンプだけが返ってきた。



帰宅してからしばらくすると、春華ちゃんが訪ねてきた。


冬樹の件からお互い気不味くて家の行き来はしなくなって疎遠になっていたので不思議には思ったのだけど、お姉ちゃんがわたしのメッセージを気にして夏菜かなお姉ちゃんと春華ちゃんに気にかけて欲しいとお願いしてくれていたとのことだった。もしかすると、冬樹ふゆきにもお願いしているのかもしれないけど今のわたし達には知る術がない。



美晴みはるお姉、美波ちゃんから不審なメッセージを送られてきたって心配してたよ」



「たしかに不審だったかも・・・」



久しぶりとは言え物心付く前からの幼馴染みなのでブランクを感じさせない間合いで心配してくれる。とは言え、どう説明すれば良いのかわからないところもあってゆっくり考えたかったので、テストが終わるまで保留にして気持ちの整理がついたら相談するということで納得してもらった。


また、冬樹が事件の後すぐに家族とケンカ別れをして家を出ていってしまっていた事を知った。冬樹だけでなく春華ちゃん達ともこんなにも疎遠になったのは物心がついて初めてのことだったので、そんなことすら知ることがないほど関係が薄くなってしまっていた事にも悲しくなった。



期末テストの最終日も終わり、テスト期間中だったからなのか鷺ノ宮からの接触もなく放課後はSHRが終わると同時に帰宅した。あとから鷺ノ宮から呼び出しがあるかもしれないと不安だったけど、あの日以来接触も連絡もないので、それだけは助かった。


採点休暇は一歩も家から出ず、かと言って何もする気にもならなかった。テスト返却日1日目も2日目も学校へ行く気になれず、お母さんに体調が悪いと嘘をついて休ませてもらった。この間も鷺ノ宮からの連絡はなかった。


返却日2日目の夕方、慌てた様子で春華ちゃんと夏菜お姉ちゃんが家に来た。



驚くべきことに鷺ノ宮が警察に捕まったことや鷺ノ宮に弱みを握られた二之宮にのみやさんが冬樹を性犯罪者としてでっち上げたことなどを二之宮さんが学校裏サイトに実名で投稿したというのだ。


つまり、全て鷺ノ宮が悪かったし、冬樹を信じていれば今のような状況にならなかったということを悟り号泣してしまった。


私が冬樹を好きなことはふたりとも知っているので冬樹を信じられなかったことで泣いてしまったのだと思ってくれたみたいだけど、それだけではなくわたしが鷺ノ宮達に汚されてしまったことも打ち明けた。



「どうしようもないクズ男だな。私が二度と学校へ来れないようにしてやる!」



夏菜お姉ちゃんがここまで怒りを露わにするなんて初めて見た。きっと夏菜お姉ちゃんは生徒会長の権限を使ってどうにかしようと思っているのだろう。久しぶりに感じるふたりの優しさにまた泣いてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る