第3話

岸元美波きしもとみなみ 視点◆


わたしが生まれた時から住んでいるマンションの隣の部屋に神坂かみさか家が住んでいて、その姉弟妹きょうだいとは幼馴染みとして物心が付いた時からずっと一緒だった。わたしにもお姉ちゃんがいるけど4歳年上で少し離れているので、学校でも遊ぶ時でも神坂家の姉弟妹きょうだいと一緒にいることの方が多かった。神坂姉弟妹きょうだいは私のひとつ上に夏菜かなお姉ちゃんがいて、同い年の双子の冬樹ふゆき春華はるかちゃんの3人だ。


わたしは優しくてカッコいい冬樹が大好きだったし、夏菜お姉ちゃんも春華ちゃんも重度なブラコンでよく3人で冬樹の取り合いをしていた。


冬樹もそうけどが神坂家はご両親も含めて全員美男美女な上に頭も良く優しいので誰でも好きになってしまうくらいの魅力を備えていたし、特に姉弟妹きょうだいはその魅力が日に日に増しているまである。


冬樹を取りあってケンカをすることはあっても夏菜お姉ちゃんは年上だからと面倒見がよいので好きだし尊敬しているし、春華ちゃんも冬樹のこと以外では仲良くしている。


なんだかんだ言ってもふたりとも近親恋愛まで発展させるつもりはなさそうだし、わたしになら冬樹を譲っても良いと思ってもらっているように感じる時もあった。


中学に上がってすぐの頃、2年生になったばかりの夏菜お姉ちゃんが進路を都内でも有数の進学校で知られる秀優しゅうゆう高校に決めた時に、冬樹と春華ちゃんも同じ学校へ進学したいと1年生の一学期から受験勉強を始めたので私も取り残されたくなくて受験勉強を始めていた。


もともと優秀な神坂姉弟妹きょうだいと一緒に勉強していた恩恵もあり、さほど苦労することもなく秀優高校へみんな一緒に進学することができた。また、勉強だけでなく容姿でも置いていかれたくなくておしゃれにもすごく力を入れたし、その甲斐あって夏菜お姉ちゃんや春華ちゃんと並んで美少女と言ってもらえることが多く、男子からは時々告白なんかもされた。でもわたしは冬樹のことが本当に大好きだったので全てお断りしている。中には他の女子に人気の人もいたのだけど、わたしにとってはどうでも良いことだ。


1年では冬樹とも春華ちゃんとも同じクラスになれなかったけど、夏菜お姉ちゃんと一緒に大学受験の勉強を始めてて学校が終われば神坂家でよく一緒に勉強していたし、クラスでは仲の良いグループができたので寂しかったりつまらなかったりはしなかった。



2年に上がり冬樹と同じクラスになれた。他には学年で冬樹と並んで人気があった男子の鷺ノ宮さぎのみやと学年でトップクラスの男子人気がある二之宮にのみやさんもいた。冬樹は二之宮さんと同じ保健委員になり、それがきっかけでよく話をする様になっていた。話をするだけなら良いのだけど、二之宮さんと話をする時の冬樹はわたしや夏菜お姉ちゃん、春華ちゃんと話す時と違って女の子として意識して恥ずかしがっているように感じ、付き合ってしまうのではないかと内心では焦っていた。


ゴールデンウイークが終わってすぐに冬樹が二之宮さんに襲いかかり、それを鷺ノ宮が取り押さえたという事件が起こった。最初は耳を疑い誤解かと思ったりもしたが、冬樹本人が認めたので人生で一番の衝撃を受けた。


わたしや夏菜お姉ちゃん、春華ちゃんへと違って性的に意識した視線を送っていた様に見えていたので、魔が差して襲いかかってしまったものと思い込んだし、長年一緒にいた自分へ言ってくれればいつでもそういう事をしても良いと思っていたのにその気持ちを裏切られた様に感じ冬樹を拒絶してしまった。


冬樹と関わりたくなかったので夏菜お姉ちゃんや春華ちゃんや神坂家のご両親とも距離を置き、今までの神坂家に入り浸っていた生活から離れ放課後や休日は何をすれば良いのかと迷いもしたし、勉強もひとりでできるのかという不安もあった。勉強についてはずっと神坂兄弟と一緒にやってきていたし、お姉ちゃんは優秀な人ではあるけど、大学進学を機に一人暮らしをしていてたまにしか帰ってこないので教えてもらうわけにもいかない。


そう悩んでいたら鷺ノ宮が一緒に勉強しようと誘ってくれたので行動を共にするようになった。中間テストは鷺ノ宮のお陰で順位を落とさずにやり過ごすことができたし、ずっと冬樹一筋だったとは言え鷺ノ宮は冬樹に並ぶほどのイケメンでもあるので惹かれるようになっていた。

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