第78話 修学旅行の話しをしよう

 話しをしよう。



 それは恋の物語。

 


 それは恋を知らない少年少女の物語。



 それは恋について考える少年の物語。



 少年は恋に迷っているらしい。それで楽しみな、大切な修学旅行だと言うのに私を呼び出した。



 やれやれ。



 少年はいつも、最初から私の言うことを聞かなかったからな。



 私の言う通りにしていれば。



 まあ、良いやつなんだけれども。



 だからこそ、真剣に悩んだりするんだけれども。



 さて、ラブレターは全部で二通貰ったんだったな。そしてその両名がよく知った相手であることが今回悩ませている原因であると。適当な人ではないから、イタズラとか軽い気持ちで送ったものではなく、真剣そのものであり、気持ちのある手紙であることがわかっているからこそ、だからこそどうしたら良いのか分からない。ちゃんとした答えを返したい、しかしちゃんとした答えを持っていないからどうしたら良いのか分からない。つまり、そういう事だろう。



 しかし、その両名も肝が座っているよな。同じクラスメイトとはいえ、三人も見ているところで手紙を直接渡したり、担任の先生とはいえ、他人にラブレターを預けたりするなんて、度胸がある。信頼の裏返しとも言えるが、それでも恋文だぜ。隠したりせずに堂々としたほうが、その方が振る舞いとしては正しいのかもしれないが、普通はそんなに他人に知られたくはないんじゃないかと思うのだが、それは思い込みか? 乙女心がわからないというのは、少年と同じくこの私も、深中負穏も変わらないということだろうか。心に住む自称神の使い、堕天しているかもしれない天使ですら無いかもしれない適当な設定の私では、分かりっこないという事だろうか。なるほど、難しいね。世知辛いね。



 さて答えを出すとしたら、たとえば答えを出すとしたらそれはいくつかパターンがある。まずはイエスの場合。流石に両方に出すような無責任なことはできないのでどちらかに決めて、どちらかに出すことになる。ノーの場合は、片方イエスなら片方はノーとなる。両方ノーという答えもある。孤独主義の彼からしたら一番適当でありえそうなのが、両方ノーだろうな。でも、真剣な答えを出したいならば、出したいというその場合、それも、それすら躊躇ためらうだろう。



 ではどうするか。答えは最悪にて最低、しかし本人にとってはベストにして最善の答え。それが一つある。



 それも選択の一つだ。自分で選んだのだとするならば、それでも良いだろう。



 人が持つ唯一絶対の力。何度も言うが、それは自らの意志で進むべき道を選択することだ。



 少年は常に人にとって、自分にとって最良の未来を思い、自由に選択していけばいい。



 さぁ……行こう。



 修学旅行はまだ残っている。



 楽しい思い出ができると良いな。



 では、また会おう。



 さらばだ。


 

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