2話 憂鬱な日々

気が付けば外は明るくなっていた。

僕は寝起きで、ただ時計が鳴り響く部屋の中ただぼーっとしている。

誰かが階段を上がる音が微かに聞こえてきた。

「渉〜?起きてる?今日から数日の間おばあちゃんの家に行かない?少しは気分転換になるかなって思ったのだけど、どう?」

「え?今日平日じゃ…?」

「今日から数日休むって学校に連絡したよ?どうする?おばあちゃん家行かない?」

僕は少し考えた後、気分転換になるならいいと思い行く事にした。

「おーい!誰か荷物もってきてくれないか〜?」

お父さんが外から呼んでいる。

「はーい!今行くから待ってて〜」

母が窓越しにそう返答した。

「渉は準備して待ってて」

「うん…」

そして数十分後準備を終え車に乗り出発した。

出発し数時間が経った頃、車の外には見たことのある田舎の景色が目に飛び込んできた。

それと同時に、澄み渡った空気が窓から流れ込んで来る。

「渉〜?もそろそろ着くぞ〜」

お父さんは穏やかな声でそう言った。

「渉は小さい頃以来だから、あまり覚えていないかもしれないけれど、きっと気に入ると思うわ」

僕の祖父母は僕が小さい頃に亡くなってしまい、それからは祖父母の家をお父さんとお母さんが管理をしている。

僕が祖父母の家に行くのは6年振りだった。

それから数分後、祖父母の家に着いた。

「俺は井戸から水を組んでくるよ」

「分かったわ〜私は部屋の窓を開けてくるね。渉も窓開けるの手伝って欲しいな」

渉は小さく頷いた。

それから次々と固い窓を開けて行く。

すると僕は1つ気になる事があった。

全ての窓を開けたと思っていたのに、2階の小窓が空いてない事に気がついた。

そして僕は一つだけ見逃していた部屋を見つけた。

部屋に入るとすごいく埃が舞っている。

窓を開けると部屋に光が差しみ、部屋の辺りが日光に照らされ明るくなった。

周りを見渡すと1冊のアルバムが机に置かれている。

気になりアルバムを開けると、白黒写真がいっぱいあり、僕は見入ってしまった。

すると後ろからお母さんが話しかけて来た。

「渉?何見てるの?」

「あ!勝手に見てごめんなさい…」

「大丈夫よ!それはおばあちゃんの家族写真だね」

写真には祖父母とお母さんが写っている。

「私達の家族写真も欲しいわね!せっかくだから今日ここで家族写真取りましょ!」

「おーい水汲んで来たぞ〜!」

「はーい!さて、掃除しましょ!」

それからは窓や床拭いたり、埃を払ったりして掃除をした。

そして昼頃、昼食のおにぎりを食べながらお母さんと話していた。

「ねぇ渉?」

お母さんは僕に問いかけた。

「なに?」

「蛇神の夜刀神って知ってる?」

僕は首を横に振った。

「大昔に麻多智っていう人が村のために新しい田んぼを作ろうとしたんだけどね、祟り神の夜刀神が作るのを邪魔したの。それを麻多智が追い払って土地につえをたてて夜刀神にこう言ったの。ここからは人間の土地で杖から向こうは神の土地、神社をたてて崇めてやるから人を祟るなって。」

「夜刀神に祟られるとどうなるの?」

「夜刀神に祟られると、子孫が途絶えるって言われてるの。それで夜刀神は納得して森に消えていったの。それで数百年経って、壬生連麿っていう人が神の土地に池を作ろうとしたの、それを妨害しようと再び夜刀神が出てきたの。それに壬生連麿は怒って夜刀神なんて知らない、邪魔するなら殺すだけだって叫んだの。すると夜刀神は何処かに行ってしまったっていうのが夜刀神の話なの。それで、私は麻多智の子孫なの。もちろん渉もね?」「でもそれって夜刀神は人間を恨んでるんじゃ…」

「そうかもね…今は夜刀神社には夜刀神は居ないけど、お供え物をして待っていればまた戻ってきてくれるはずだってわたしは思ってるわ」

夜刀神の話をお母さんから聞いてる間僕はずっと静かに聞いていた。

夜刀神はきっと人の事が嫌いになっている、戻ってくるはずがないとそう僕は思っていた。

そうしているうちに気がつけば日が暮れかけていた。

それからは古くなったお風呂で湯船につかって心と身体を癒し、お母さんの作るかぼちゃの煮物をおなかいっぱいたべ布団で休息を取った。

次の日

「今日は家族写真撮って帰えるわよ〜」

「うん…」

それから家族写真を撮り、お父さんの車に乗って家に帰宅した。

「おばあちゃん家はどうだった?」

「連れて行ってくれてありがとう。僕ちょっとだけ元気でたよ」

「それなら良かったわ。また行きましょうね」

そしてその日の晩に現像した家族写真を貰った。

家族写真は大切に写真立てに入れ飾った。

その日は心も落ち着いていてすんなり寝ることが出来た。

「渉〜?起きなさい!今日は学校よ〜」

お母さんの声が耳に響く。

また憂鬱な日々が始まる事に嫌気がさした。

気分転換にはなったが、楓真の事を忘れるわけがなかった。

僕はただ日々何の理由もなく生きているだけだ。

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