コトバ修繕士ヨモは相棒霊獣ギイくんを見返したい
髙 文緒
プロローグ
『ヘイ ディドルディドル
ねことバイオリン
ウシが月をとびこえた
そんなのをみてこいぬがわらった
そしてお皿がおさじをつれて逃げてった』
(マザーグース『Hey, diddle, diddle』・訳:筆者)
池に
少女は、黄色いシルクの
「さっきからなにを暗唱しているの?」
背後から青い
「お姉ちゃん。いまね、ディドルディドルが何だか考えていたの」
「それは、シなの?」
「うん、エイゴのシみたい。でもディドルディドルがよく分からないから、きもちわるい。コトバってこういうのがあるから、困る」
「でも、困るのが好きみたいだね、ヨモは」
お姉ちゃん、と呼ばれた方の少女が、ヨモと呼んだ少女の
「ヨモ、また
「だって、池で遊ぶのに邪魔なんだもの」
「遊びに来たんじゃないんだから。ヨモがお父様のお仕事についていきたいなんて言うから、連れてきてくださったのよ」
姉の苦言は右耳から左耳に抜けていったようで、ヨモは、笹舟をながめながら、再びシの暗唱をはじめた。
『ヘイ ディドルディドル
ねことバイオリン――』
姉は肩をすくめて、裏の門に停めてある馬車の方へと戻っていった。
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