第4話 トートーの能力
「受け取ってないわよ、もらってないわよ。アンタはお客を疑う訳?失礼じゃない?」
いやいや、たった今、渡しましたよ。今すぐバックの中、見てください。
「なんだ、その態度は!客を馬鹿にしているのか?お前じゃ話にならん、誰か上の者を呼べ‼︎社長を呼べっ‼︎」
千円ちょっとのお買い物も静かに出来ない理不尽な駄々をこねるクレーマーの対応で社長が出てくると本気で思ってんの?
「アンタの喋りが気に食わないんだよ。何やってんだ、さっさとしろ。」
こちらだって説明してお渡しするのが仕事なんで。趣味でアンタと話してるわけじゃないんで。
こんなクレーマー達はみんな今すぐ私の目の前から消えてしまえばいい‼︎
サービス業をやっていると、定期的に遭遇してしまう嫌な客。心の中で客の悪口言って憂さ晴らししても、客に言われた嫌な言葉はずっと頭の中に残ってしまう。グルグル、頭の中でリピートされる。蓄積されて考え続けてしまう。
そもそも、私の微妙な特殊能力がわかったのも、嫌なヤツを心の中で罵ったことがきっかけだった。
高校生の時、すごく嫌いな教師がいた。ネチネチと嫌みを言う最悪のタイプ。
ある日、そいつは授業中急に体調が悪くなり保健室に行く許可をもらおうとした女生徒にネチネチと嫌みを言った。困った女生徒は半べそになり顔を真っ青にしていた。体調の悪い女生徒にそんな嫌味を言って、はやく保健室に行かせてあげたらいいのに。
私は怒りのあまり心の中でその教師に向かって叫んだ。
「今すぐ腹をこわしてアンタがトイレに行け‼︎‼︎」
心の中で激しい憎しみとともに声にならない罵りを教師に向けた。
私の心の声に呼応して、その教師は真っ青になり突然踵を返して慌てて教室を出て行った。
生徒達は突然の展開にあっけにとられて呆然としたが、その隙に体調の悪い女生徒は教室を出ていくことができた。
男子生徒がすかさず教師の後を追いかけて行き、トイレに駆け込んだぞと皆に報告した。
こんな偶然ありえない。私が激しく心の中で罵ったせいで?
教室の中が静かなクスクス笑いで満ちる中、私は自分の能力に心底驚いていた。これは偶然ではないよね?
それからというもの、私にとって面倒くさいヤツは、トイレ送りになる運命を背負って頂くことになる。
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